【刀剣乱舞】拝啓、師匠。どうやらミーは審神者らしい【REBORN】

11：主の日常 ページ11

───それでは、また一週間後に

そう挨拶して、自称未来人は去っていった。
異空間転移などでは無い
ちゃんと大人しく自分達が入ってきた扉から、だ

入れ替わりに入ってきた幹部連中の何やら聞きたげな眼差しを適当にいなし、さっさと三人は部屋を後にした。

自分達の後ろを室内や窓の景色に眼を輝かせる歌仙兼定には誰一人として気付く者はいなかった。
代わりに、と言ってはなんだが
フランが腰に佩く刀への違和感の方に視線が集中していたと言えよう

本人らはそんな煩わしいものに一切我関せず
ただただ、案内人への愚痴と今後と
うちの幹部連中･師匠達へどう巻き込んでやろうかといつも通りの愛らしさ満点の悪巧みを会議しているだけだ

送迎車に乗り込んでからも変わらず
気付けばあっという間にアジト前
端末を確認すれば、丑三つ時という我ら暗殺者の
ゴールデンタイムであった。

「シシシ、王子いっちばんノリー！」

勢いよく談話室の扉が開け放たれる
どちらかと言えば、蹴破るに等しい素行に
最後尾で殿を勤めながら、史料でしか見た事のない西洋の風情ある城造りを観察していた歌仙兼定も、
思わず自身の主となったフランを仰ぎみた
が、帰ってきたのは肩を竦め溢れ落ちる浅い溜息
……まぁ、会議のやり取りを思い返せば
妥当といえば妥当な行動か

「ム、なんだい君たち。全員いるじゃないか」
「相も変わらず暇なんですねー」
「なんだその言い草は！」

キレるレヴィにそれを窘めるルッスーリア
そこに輪をかけるが如く飛び交う
先の鬱憤晴らしも兼ねた軽口の応酬達を
スクアーロが自身の声量で押し潰し、
今度はその方向へ野次が飛ぶ

フランにとってはいつもの
そして歌仙兼定にとっては、事前に資料で
知らされていたヴァリアーの日常があった。

(……ふむ、なるほど。事実は小説よりも言うけれど、やはり自分の目で確かめない事には分かりえない、か)

くすり、と空気が揺れる
この光景を資料として書記すには
どんな言葉でもってしても無粋としか言えない

一見すれば、仲の悪い集団である
が、蓋を開けてみればなんてことの無い
ただお互いに読み合えるがこそ言葉が要らず
飾らぬ己自身のまま、やりたいように
好きなようにしているだけだ

この距離感をさて、どう事に記そうか
今すぐ筆を取りたくてしょうがない

そんな気を緩めた歌仙に向かって
すかさず鋭い眼光が彼がいる空間を射抜いた

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