35 俺としよっか。 ページ35
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目の前の光景が信じられずにいたが、私と京本くんはキチンと目と目があってしまっている。
店員さんは「キャー、似合ってますよ〜」とお得意のお世辞を言ってくれているがその声は私の耳には届いていなかった。
「Aさん、似合ってるね」
京本くんの口からそんな言葉が発せられたのと同時に一気に顔が火照ってきてカーテンを勢いよく閉める。
頭が完全に混乱してしまった。
なんでこのお店の中に京本くんがいるの！？
私のこの格好見られた！？
…いや、でも似合ってるねって言ってくれたよね？
ってバカ！絶対茶化してるだけだって！
私は店員さんに一言告げて自分が来ていた洋服に着替える。
カーテンを開けるとそこには京本くんはいなくて、あれって私の見間違いだったのかなって首を傾げていた。
何も買わずにお店を出るとやっぱり見間違いじゃなかった。
「さっきの洋服、買ったの？」
「京本くん！なんでここにいるの！？」
「えー、俺もショッピングしてたらAさんがこのお店に入っていくのが見えて、後つけて来ちゃった」
「…ホントに？」
「ウソ。この前、樹たちと作戦会議？してるの聞いちゃってさ」
「立ち聞きなんて趣味悪いよ？京本くん」
「気になるじゃん？Aさんのこと」
サラッと恥ずかしい言葉使うなこの人はと思うけど、ジェシーくんも結構そっち寄りの人だったわと少し鼻で笑ってしまった。
「俺なんか変なこと言った？あ、Aさんの勝負服俺も一緒に選んであげるよ。でも、さっきのはナシだね。Aさんにはもっと似合う服あると思うし」
京本くんは私の返答も聞かないまま話し続ける
「樹のレンタル彼女の予行練習、俺としよっか」
火照る頬を風が横切るけれど
それだけじゃ全然、私の体温が下がることなんてなかった。
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作者名：珊瑚礁 | 作成日時：2024年1月8日 14時
