『秋の匂い』M .10/30 ページ39
.
最近、朝と夜が肌寒く感じるようになった。
家の近くに咲いたキンモクセイの香りも感じるようになった季節。
ベッドの隣に視線を移すと、カーテンの隙間から少し明るい光。
寝起き。ぼーっと。頭が働かないけれど、自分の頭の下が、いつもの枕じゃないってことは分かる。いつもと違うって、感覚で気づく。自分の隣を見ると、潤の腕が私の頭の方に伸びてる。うでまくら。
彼と同棲し始めて3ヶ月。同じベッドで寝ることにも、だんだん慣れてきた。それでも、こんな状況は初めてで。なんで腕枕なんかされてるんだろう。
私が先に起きちゃったけど、まだ起きる気配のない潤。今日は、私も潤もお休みだから、別に起きなくてもいいんだけど。それでも、意識のない中で腕が痺れてないか気になる私。
そっと、布団をめくって起き上がった。
昨日はこんなに寒くなかったのに。部屋が寒いなら、外はもっと寒いはず。布団から出たくない季節がそろそろやってくるらしい。
あくびしながら布団から出ようとすると、いきなり手首を掴まれて、一瞬でまた布団の中に戻された。ぎゅっと抱きしめられて、足まで体に巻き付かれてがっちりホールド。…ビックリした。
「起きてたの？」
「んー…」
返事を待ってたら、また寝息が聞こえてきた。
「えっ、寝たの？」
「…」
「えっ、ホントに？」
「…」
「ちょっとこの体勢で寝られるとキツいですよ、松本さん」
そう言っても、まだ寝息が聞こえてきて。
体を動かして、バタバタさせたら、んーってまた朝のだるそうな声。
「…ねむ」
「…」
「相変わらず早起きね、あなた」
「潤は朝弱いもんね」
「弱いねぇ」
「ところでお兄さん、この体を解放してくださいな」
後ろから抱きつかれてる体勢だから、彼の顔が見えない。
「もうちょっと、寝ません？お姉さん」
「うん、いいけど、この体勢やだ」
「なんでよ、いいじゃん」
「だって潤の顔が見えないんだもん」
そう言ったら、渋々離してくれた。
寝返りうったら、潤の寝起きの顔が目の前に。
「おはよ」
「…いま何時？」
「7時半」
「うわ、本当におはよの時間じゃん」
潤はまた目を瞑って、ため息をついた。
「休みの日に7時台はないよ」
「確かにね」
私もいつもなら、こんな時間に目覚めない。枕がいつもより細くて不安定だったからだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 482人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さんご(プロフ) - しおりさん» はじめまして、しおりさん。コメントありがとうございます。そんなこと言って頂けるなんて、もう嬉しい限りです(笑)こちらこそありがとうございます(´ω｀) (2019年9月21日 12時) (
レス) id: e1b1cf4c3f (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - はじめまして。どのお話も優しくて、心が温かくなりました。さんごさんの丁寧な言葉の紡ぎかた大好きです。多分何度も読みに来ちゃうやつだ(^^)ありがとうございます。 (2019年9月21日 7時) (レス) id: 072c120661 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さんご | 作成日時：2019年8月15日 16時
