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数年経った今でも、私はあの事を思い出す。
告白して拒絶された、そんな悪い思い出じゃなくて。笑って先生と生徒として別れた最後だったから、いい思い出として残ってる。
あれから一度も先生には会ってない。
なのに。
大学の資料探しで、図書館に来ていたある日のこと。
時間が止まったような気がした。
本棚と本棚の間。細い道に、綺麗な横顔を見つけた。
「相葉、先生...」
ふわっと、顔を上げてこちらを見た先生は、ロングカーディガンを羽織っていて。白衣を着ていた先生を、思い出させてくれた。
「...あれ、Aさん？」
未練なんて、無かった...はずなのに。
私の鼓動は、うるさいほど鳴っている。
図書館だからかな。この世界の音は、私の鼓動しか無いんじゃないかってくらい胸の音がする。
先生は、あの時よりも、表情が動かない。心配になる。
「...先生？」
「、あぁ...ごめんごめん(笑)びっくりしちゃってさ」
図書館だと、話しづらいね。そんな話をして、近くのカフェに腰を下ろした。
「もう、先生じゃないんだ。俺」
コーヒーが、気道に入りそうになった。
「...え？それは...なんで？」
「なんで...うーん。何でだろうね」
「...」
「なんでだと思う？」
「、」
なんで笑わないんですか？そう訊いた、あの時と同じ返事だった。
理由なんて、分かってるんだ。何でだろうね。それは私に話さない為の言葉。
あの時だってそう。なんでだと思う？そう訊いて、キャッチボールが私で終わるようにした。
「先生の仕事、嫌いになっちゃったんですか？」
「ううん(笑)...何でだろうね。自分でもよくわかんないや。」
あの時の真顔とは違う。今日は、苦笑いだった。
「...嘘。」
私が放ったその言葉に、先生は視線をこちらに向ける。
静かな時間が流れて、先生は片頬を上げて笑った。
「うん、ウソ。」
「...」
「本当は、自分でも分かってる」
「じゃあ...」
今は、ここの近所の会社の研究室にいるよ。教師をやめて、転職したんだ。
まだ先生だった時にね、転機になった生徒がいたの。
その子に...、教師として抱いちゃいけない感情を持っちゃったんだ。
「、...」
その瞬間、目が合った。
なんでなのか、よく分からないけど...先生の瞳から目が離せなかった。
「まぁでも、今就いてる仕事みたいなこともしてみたいと思ってたから」
「...」
「転職して後悔はしてないよ。好きだったけどね、教師の仕事」
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さんご(プロフ) - しおりさん» はじめまして、しおりさん。コメントありがとうございます。そんなこと言って頂けるなんて、もう嬉しい限りです(笑)こちらこそありがとうございます(´ω｀) (2019年9月21日 12時) (
レス) id: e1b1cf4c3f (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - はじめまして。どのお話も優しくて、心が温かくなりました。さんごさんの丁寧な言葉の紡ぎかた大好きです。多分何度も読みに来ちゃうやつだ(^^)ありがとうございます。 (2019年9月21日 7時) (レス) id: 072c120661 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さんご | 作成日時：2019年8月15日 16時
