【wrwrd】無能に扮して (ページ37)

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倭国に降りた時以来の陸に、ふわふわしたような不思議な感覚に襲われつつも、入港や荷下ろしを手伝ってくださった漁師の皆さんにお礼をしていた。

私は今、ドイル帝国の王都にある港へ帰港したところだ。

荷物が載せてあった、船と一緒にもっていったトラックは先に荷物ごと城へ運ばれていった。

全ての仕事を終わらせた私たちは、迎えの車に乗って要塞へ戻った。

部下たちとは入口で別れ、宿舎へ向かっていった。ここに副隊長がいれば、本館までは一緒に向かっていたのだけれど、こういう仕事のときは副隊長は連れてこないので一人で戻ることになる。

大量の書類や着替えなどが入った重たい鞄を持ちながら、自室へ戻ろうと重い扉を開けた。

開けてすぐ、目の前を通り過る白くてでかい何かに少しびっくりしたが、それがこちらに気付いてぴたりと足を止めた。
ふわふわの、しんぺいさんとは少し違う水色の髪と、丸い瓶底眼鏡が特徴的な長身の男。チーノ君や。

チーノ君は目が合っても何か言うわけでもなく、また私からも何か言うわけでもなく。
彼はすぐに、再び歩き始めた。何もいないかのように。

アイツ私が教えてやったことあるの忘れたんか！！あの詐欺師が！！

まぁそんなのもいつものことだ。私も何事もなかったかのように自室へと向かった。
腰が痛い。

部屋は出かける前とほぼ変わらないず埃も溜まっていない。アイルとネルが掃除をしてくれているおかげだ。

私は鞄から取り出した書類を持って最上階へ向かった。

まずは船にまでもっていった書類をトントンへ提出しなくてはならない。
氷に突き刺されるような不思議な感覚を覚えるあの視線を思い出し、思わずため息が出た。

ノックをすると、中から疲れたような声で返事が返ってくる。あぁ、かわいそうに。

失礼します、と声をかけて部屋へはいると、声の通りいかにも疲れたような顔をしていた。にもかかわらず、私と目が合った瞬間一気に冷たくなるその視線に少しばかり緊張する。

「書類、明後日期限のもの持ってきました」

ト「ん」

おぉ珍しく返事が返ってきた....疲れてんねや。

ト「.....もうええ。さっさと出てってくれ、気が散る」

「はい、失礼しました」

言われるがまま外へ出る。はぁ～怖かったぁ～。

そのまま私はグルさんの部屋へと向かった。