【wrwrd】無能に扮して (ページ36)

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グ「Aに関してだが、証拠不十分なため処罰はなしだ」

そういったのだ。

会議室にいた俺たちは耳を疑った。一部はホッとした顔をしていたが、俺を含め過半数はやはり、怒りにも似た表情を浮かべていた。

俺たちは抗議したがグルさんは受け付けなかった。

処分しない理由自体はしっかりしていたが、それでも俺たちはグルさんがあいつをかばっているようにしか見えなかった。

この事件の後も、Aがアリスに嫌がらせや暴力をふるうといったことが何度もあったが、そのたびにグルさんは何かと理由をつけて、Aは罰を受けず、今も幹部であり続けている。

そしてこれらの怒りを、俺たちはあの無能へ向けるようになったのだ。

軍内部でもこれらの噂は広まり、Aは一般兵からも軽蔑されているようだった。

コネシマやゾム、シャオロンなんかは、よく訓練と称してAに暴力を加えている。

それを見て怒っていたのは、しんぺい神やロボロ、エミさん達だった。グルさんもあからさまに不機嫌になっていたりしたが、俺がグルさんも原因の一つだといったことで少し収まっている。

ト「なんでアンタは、あんな無能のためにそこまでするんや」

グ「そこまでもなにも。仕事を頼んだのはワシやで。普通だろ。アイツも持っていける仕事は全部持ってってるぞ。何か文句でもあるんか？」

あぁ。またこれや。

またグルさんはアイツを庇う。
でも正論っちゃ正論やからなんも言えへん。

いつの間にか書類のチェックが終わっていたようで、グルさんはそれを俺に差し出した。

ト「...じゃあ失礼します」

グ「おう」

俺はくるりと身を翻して、いまだに扉が開けられたままの入口へと向かう。

ト「グルさん、ここ閉めます？」

グ「あぁ、すまん。頼むわ」

ト「へーい」

重たい扉を閉めると、途端に雰囲気が重たくなる。扉からの圧がすごい。

俺はそんな扉に背を向けて歩き出す。
自分の机の上で書類が山を作っている様子を思い出して、出てくるため息を抑えようともせず、なんならより大きく吐いた。

「グルさんとこに行ってる間に書類が全部消え去っててくれ」と願いながら長い廊下を歩く。

部屋の扉を開けると、そこには書類の山がなくなっている、なんてことはなく。
いつ自分の机の上に紙がなくなるのだろうと嘆きながらも、俺は机に向かった。

ト「....またアホみたいなミスしてるやんけ！！！！！！！」