【wrwrd】無能に扮して (ページ25)

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五日後。私は車にのってネルの故郷へ、王都へと向かっていた。

ネ「近くには森もあって、きれいな川も流れているんですよ！！それでですね＿＿＿」

先ほどから止まる気配のない、ネルのふるさと自慢。私とアイルは時折顔を見合わせて苦笑いを浮かべつつ相槌を打った。聞いている限りでは、自然あふれる場所らしく、農業も栄えているらしい。

たしかにあの町からは王都にも要塞のある街にも、農産物を供給してもらっていた。

「さぁ、そろそろ着くんじゃないでしょうか」

ネ「はい！！もうすぐです！！」

ア「ここからでも森が見えますね...。ネルの言う通り、遠目から見ても綺麗ですね

車から降りて、あたりを見渡す。
昔からある家が多いのか、大きめの家が並んでいるが、陰鬱な雰囲気は感じない。
むしろ幻想的とも思える。

だが真新しい店もいくつかあり都市部には少々劣るものの、現代的な施設も多くあるようだ。

自然と街が合わさる素敵な街。
それがここの印象だった。

ネルは嬉しそうに、私たちを連れて街を歩いている。街ゆく人には笑顔であいさつをされた。
教育水準の高そうな街だが、よく思い出せばネルは少学までしか通っていなかったはずだ。

家庭での道徳的な教育が出来ているのだろう。

いくらか歩いて、ある店の前でネルは立ち止まった。

ネ「ここです！！」

「おいしそうなにおいがしますね！」

ア「ここが...」

私たちにここで待つように言って、ネルはあわただしくその店に入っていった。

すぐにネルが扉から顔を出して、「どうぞ！」というので、私たちはそのまま店の中に入った。

ネ「この人がA様で、こっちがアイルさんっ！！」

「ほ、本当にA様なのですか....！？」

たくさんのお菓子の入ったガラス張りのケースの向こうで、ネルと同じ色の髪をした女性がいた。
この人がネルのお母さんか。綺麗な人だ。

「初めまして。突然押しかけてしまい申し訳ありませんでした。私は水産省長官かつ帝国軍に所属しております、Aと申します」

ア「私はネルさんと一緒に仕事をさせていただいています、アイルと申します」

「いつもお世話になっております、ネルの母です」

店の出入り口にかけてあった「OPEN」と書かれた札を裏返すと、「どうぞ、奥へいらしてください」とカウンターの横にある戸をあけて、私たちを奥へ入れてくれた。