【wrwrd】無能に扮して (ページ11)

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お茶会も終わり、ティーセットを片付け始める私達。
我々幹部の部屋には飲み水も出るシンクがあるのでそこで洗ってしまおう、と席をたった。

ア｢....A様、それも御自分で洗うおつもりですか｣

｢へ｣

急に声をかけられて、アイルの方へ振り向いた。アイルはほんの少し不安そうな、悲しそうな顔をしている。ネルはアイルの弱った姿を見て少し慌てているのだろうか、私とアイルの顔を交互に見てくる。

実際、私も少し焦っていた。

ア｢....A様｣

｢なんですか？｣

アイルの顔はますます強張っている。此方にも緊張が伝わってきた。

ア｢A様、これから私がお話しすることには....A様を侮辱しようなどという意思がないこと、どうかご理解下さい...｣

｢分かりました｣

私はそう言って再びソファに座った。
アイルの手が震えているのに気がついたのか、ネルはアイルの肩をさすっている。
私が続けて、と話すよう促すと、コクリと一度頷いてまた顔を下に向けながらもアイルは話を続けた。

ア｢A様はとてもお優しい方です。そしてとても強い。なんでもこなしてしまいます。それを見ると、私は...私達は、不安になるのです｣

紡がれる言葉は震えていた。その心を表すかのように弱々しく声は続く。

ア｢私達はメイドです。主の身の回りのお手伝いや雑務をこなすよう教えられてきました。そしてそれが私達の仕事です。....ですが、A様はいつも笑顔で、一人で、知らぬ間にどんどんやっていってしまわれます。
それはA様の優しさ故。そうは分かっていても、それでも不安なのです。私達は貴女にとって、必要のない存在なのではないかと｣

ネルはなんの話か気付き始めたのだろう。ネルの顔も暗くなっていく。

ア｢A様は、今までに無いほど素晴らしい主です。私達と同じ立場で話をしてくださいます。私たちを救ってくださったA様にお仕えできて、本当に光栄に思います。でも...｣

今までずっと黙って聞いていたネルも、口を開いた。

ネ｢A様、私も不安です...。私達がただの穀潰しになっているんじゃないかって...｣

私が癖でやっていたことは彼女達の仕事を奪ってしまうも同然なのだ、とようやく気付く。
不安になるのも仕方がない。

そんなことにも気づけなかった私は、本当に無能なのかも知れへんな。

彼女達の伝えたいことは分かった。
今にも泣きそうな二人の不安を消し去ってあげたい。
今度は私が話をする番だ。