餅との日々27 ページ27
そわそわしているとカタクリさんが降ろしてくれた。
柵に手をかけて下を覗く。海だ。
「落ちるなよ？」
『はいっ！』
あ、魚だ！なんか変な色の魚が多いな…。
でも船…楽しい！！
1人でキャッキャしているとカタクリさんが微笑ましい目でこっちを見ていた。
「カタクリ様！直にスムージー様からお伝えされた不審な船の場所へと到着致します！！」
「わかった。念の為、各自戦闘準備。A！」
名前を呼ばれたので駆け寄る。
「Aは船室へ。入ったら鍵をかけて俺が声をかけるまで出てくるな、わかったな？」
テキパキと指示を出していくカタクリさん。
やっぱり頼りになる人なんだなぁ。
船室へと入って鍵をかけ、扉についている小窓から外を見る。
カタクリさん、見えない…。
慌ただしく船員さん達が走り回ってるのはわかる。
外の声も聞こえる。
「やっぱり海賊船だったな！」
「命知らずな奴らだぜ！」
「でも可哀想な奴らだよな。カタクリ様がいるんだぜ？瞬殺だろ」
どうやら不審な船というのは海賊船だったらしい。
カタクリさんの実力は相当なものらしい事が聞いてわかる。
急にグラァッと船が揺れた。
『わわっ！』
「撃ってきたぞー！」
「迎えうてー！！」
わー！！という大声があちこちから聞こえてくる。
船は何回も大きく揺れ、外の怒声、罵声は大きくなる。
これが…海賊の戦闘…。
「カタクリ様が敵の船へとお移りになった！」
「よっしゃ！もうこれで勝ったな！」
「あっけねぇぜ」
カタクリさんなら負けないってわかってはいても不安になる。
自分の世界では有り得ない光景で…。
カタクリさんが敵の船に移ったと聞こえてからの戦闘はすぐに収まりを見せていた。
船室のベッドに座って震えを落ち着かせる。
怖い。海賊…戦闘…。
この世界の事を甘く見てた…たくさんの命が今この場で失われている恐怖。
ガシャン！！
え…？大きな音がした為、目の前を見るとそこには知らない男の人。
扉が蹴り開けられたらしい。
「こんな所で野垂れ死ぬくらいならこの船の何人かを道連れにしてやる…」
この人…敵の海賊だ。
誰も気付かないうちに忍び込んで来たんだ。
大声を出さないと！
声が…出ない。怖くて声が出ない…。
血走った目が私を捉えゆっくりと近付いてくる。
「この船に女だぁ？…まぁ何でもいいか、なぁ嬢ちゃん…俺と死のうや？なぁ？」
気味の悪い笑み。
やだ…怖い…怖い…助けて！カタクリさん！
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作者名：三月兎 | 作成日時：2020年8月8日 18時
