モルガンズ２ ページ9
『海賊だって脅さなくてもその島の人達は快く私達に接してくれたんだ。食料もいっぱいくれたし、寝床も用意してくれた…だから深く考える事をしなかった』
『その島に男の人が一切見当たらない事なんて』
その言葉には強い憎しみが篭っていた。
『女ヶ島のように男子禁制な訳でもない…それに、小さな男の子は存在してた。その理由は私達がその島から出ていく日に教えられた』
いつの間にか聖母のような優しさは消え失せ、目の前にいる女の顔は憎悪で歪みきっていた。
『島そのものが…呪われていた。その呪いは男の子が成長するにつれて自我を失い…成人になる頃には屍人が生者を求めるように肉を喰らうようになる…そしてその呪いは島民だけがかかるものという訳でもない…島そのものにかけられた呪いなのだから足を踏み入れた時にはもう…』
「ちょ、ちょ、ちょ、待て！そんな島、世界政府だって放っておかないだろ！」
『世界政府？非加盟国のちっぽけな島を何とかするとでも？はぁ…続き、聞く気ある？』
半信半疑になりつつも、気になる話に勢い良く首を縦に振る。
『じゃ、続きねってもう大体想像つくと思うけど…その島を出てからの数日後には日に日に地獄のような光景になっていった…女であり、船長である私だけが唯一まともでいられたから…だから…皆に移ってしまった呪いをこの手で終わらせた』
先程まで強い口調で話していたはずの女が拳を握り、唇を噛み締めて涙を流す。
すすり泣く声が消えた代わりに聞こえ始めたのは悲痛な声。
『それでさ！！！そんな島の存在も！呪いを黙っていた島の奴らも全部！！殺して燃やしてやった…私に出来る精一杯の弔いをしてやった！！！…そんな事したって大事な人達は戻ってこないっていうのに馬鹿みたい…！』
立ち上がり、息を切らし、何かに許しを乞うように…必死に声を枯らし叫ぶ。
呆然と彼女を見上げる俺に問う。
『どう？こんな話記事に出来そうにないでしょ？』
その顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃにも関わらず、今までに見た事のない笑みで…。
「必ず記事にしてみせる、新聞に載せてみせる！だから…だからどうか死なないでくれ」
何故かはわからない、彼女が命を断つような気がした。
そしてそれをまた何故かはわからないが嫌だと思った。
立ち上がり、彼女を抱き締めると『有難う』と小さな声が耳に届き理解する。
俺はこの女に惹かれ始めているのだと。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
箱 - ステキな作品を書いてくれてありがとうございます (2023年1月15日 19時) (
レス) id: e97eef8072 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ々(プロフ) - 首が長くなっても待たせていただきたいと思います(´▽｀) (2022年11月8日 21時) (レス) id: 5e3da37f48 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ々(プロフ) - とんでもないです…。コメントにてお返事を頂けるのは勿論うれしいですが、何よりお忙しいかと思いますので、余裕がお有りの際に気軽に書かれた小説を読めるのが一番嬉しいです。 (2022年11月8日 21時) (レス) id: 5e3da37f48 (このIDを非表示/違反報告)
三月兎(プロフ) - ねこ々さん» ねこ々様 前回のコメントのお返事が出来ていなかったというご無礼をしていたというのにも関わらずリクエストを頂けて有難うございます(´；ω；｀)！！近いうちにアップさせて頂きますのでもう暫くお待ち下さいっ！！ (2022年11月8日 17時) (レス) id: 5bf5ba8679 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ々(プロフ) - また三月兎様の小説を読みたくなったので、何度もお恥ずかしいですがリクエストをしたいです。 モルガンズでお願いできますでしょうか？ (2022年11月5日 18時) (レス) id: 5e3da37f48 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：三月兎 | 作成日時：2021年1月7日 21時
