第46話 ページ6
三日。
弔がこの部屋に来なくなってから三日経った。
別に弔が来ないからと言って、不便なことなんて何もなくて。
一日三回。
黒霧さんが美味しい美味しいご飯を持ってきてくれる。
備え付けのテレビから外の情報を受け取ることが出来る。
『女子高校生誘拐事件』
『敵連合の目的は？』
連日深夜まで私の話題で持ち切りだった。
でもニュースが流れているからと言って、捜査に進展があるかと聞かれれば、そういうことではない。
敵連合は未だ謎が多い組織らしく、私が誘拐された経緯も動機も分からない。
つまり、手がかりはゼロ。
警察もマスコミも機能していない今、プロヒーローですらもお手上げらしい。
改めて、すごい組織に捕まったんだと痛感させられる。
ダメだ。
考えたらダメだ。
思考を巡らせれば巡らせるほど、自分が置かれた状況が燦々と見えてくる。
扉もない部屋に閉じ込められ、淡々と毎日を送る。
来るか来ないかなんて考えるまでもない助けを待ちながら。
気が滅入る。嗚咽が溢れてくる。泣きたくなる。
ダメだ。
正気を保たなきゃ。
何か別のことを考えなきゃ。
楽しかったこと、嬉しかったこと───、
「まただ…」
誰も居ない部屋に小さく呟く。
頭を抱えて、目を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのは、気だるそうに、面倒くさそうに、でもどこか楽しそうに、幸せそうに私の中に棲みついた弔の顔だった。
初めて会った時。
じゃんけんでのベッド争奪戦の時。
弔が一番機嫌が悪い朝の時間。
出久へのプレゼントを買いに行った時。
黒霧さんも一緒にご飯を食べた時。
全部楽しかったことになってる。
「…消えて、きえ…てよ…っ」
『消えろ』と願う度に色濃く思い出してしまう。
飛んできたボールから守られた時。
抱き締められた時。
押し倒された時。
耳を触られた時。
初めて弔の名前を呼んだ時。
弔が初めて、笑った時。
「…っ、うぁ…」
泣きたくないのに。
泣きたくなんてないのに涙が溢れてくる。
止めることなんて出来なくて呼吸が荒くなる。
『たかが女一人、初めからなんとも思ってるわけないだろ』
そんなこと言われたって、
嫌いになんてなれる訳ないでしょう？
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暁稀 - これこそ純愛。YES純愛。黒霧さんイケメン過ぎて禿げました、どうしてくれるんですかありがとうございます！ (2021年8月13日 3時) (
レス) id: 5c3eb28485 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 最高すぎます！！ (2019年12月29日 2時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
budou(プロフ) - やばすぎた。読んでるだけやのに幸せ... (2019年10月13日 7時) (レス) id: bca9c6f33f (このIDを非表示/違反報告)
チイナ(プロフ) - もう号泣でした。涙がぽろぽろ溢れ出てきて、あーいい作品に出会ったなぁ、と感じました。私の大好きな作品に追加です！このような作品をお作りいただきありがとうごさいます！また読み返しに来ます。 (2019年7月15日 8時) (レス) id: f759a37db1 (このIDを非表示/違反報告)
琴(プロフ) - はじめまして。何度も何度も読み返してその度に感動させられて、こんな小説久々に読みました！！また読みに来ます！この作品に巡り合えて幸せです。本当にありがとうございます！ (2019年2月9日 21時) (レス) id: f1af7a443b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うすしおタルト | 作成日時：2018年8月26日 19時
