第62話 ページ22
「あ、あの〜…」
「ん？」
うしろから聞こえてきた控えめな声に、弔の腕の中で体を反転させると、どこか気まづそうに黒霧さんが立っていた。
「黒霧…、お前居たのか」
「死柄木弔っ！？」
「弔、それは酷い」
ボロボロの格好でオロオロする黒霧さんに弔が放った一言に少し引く。
多分っていうか、黒霧さんボコったの絶対弔でしょ。
今可愛く私をうしろから抱き締めてるけど、ボコったの弔でしょ。
そう思いながら、私は口を開く。
「黒霧さん。せっかく逃がしてくれたのに、帰ってきちゃってごめんなさい」
「椛さん…」
「家具、運ぶの手伝ってもらってもいいですか？」
「…はい」
幸せそうに。
幸せそうに黒霧さんが頷いたのを見て、私も微笑んだ。
もう二度と、黒霧さんが私のために泣いたり、傷付いたりしないように願いながら。
「痛い痛い痛い痛い。弔締めすぎだって。ちょっ、首っ！首締まってる…っ！」
突然、ぎゅうぅぅ、と力を込めだした弔にそう訴えると、わずかに力を緩めてくれた。
「弔…っ、何…？」
むせそうになりながら睨むと、体を反転させられたのちにまた強く抱き締められた。
「と、弔…？」
「……」
「ねえ、黒霧さん見てるんだけど…」
そう呼び掛けるのに返事はない。
ただ私をきつく抱き締めて、それだけ。
だから私もそれに応えるように、弔の背中に腕を回す。
私よりも一回りも二回りも大きなその背中を包み込む。
「黙って抜け出して、ごめん」
「……」
「大丈夫。もう居なくならないから」
「…っ。…調子に乗るな｣
「何でー？嬉しいでしょ？」
「……」
「否定しないんだ」
「…うるさい」
「ふふっ」
弔の体温がわずかに上がった気がして、笑い声が零れる。
「ねえ、弔」
「…何だよ」
私は小さく息を吸い込んで口を開いた。
「離れないでね？」
「当たり前だろ」
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暁稀 - これこそ純愛。YES純愛。黒霧さんイケメン過ぎて禿げました、どうしてくれるんですかありがとうございます！ (2021年8月13日 3時) (
レス) id: 5c3eb28485 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 最高すぎます！！ (2019年12月29日 2時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
budou(プロフ) - やばすぎた。読んでるだけやのに幸せ... (2019年10月13日 7時) (レス) id: bca9c6f33f (このIDを非表示/違反報告)
チイナ(プロフ) - もう号泣でした。涙がぽろぽろ溢れ出てきて、あーいい作品に出会ったなぁ、と感じました。私の大好きな作品に追加です！このような作品をお作りいただきありがとうごさいます！また読み返しに来ます。 (2019年7月15日 8時) (レス) id: f759a37db1 (このIDを非表示/違反報告)
琴(プロフ) - はじめまして。何度も何度も読み返してその度に感動させられて、こんな小説久々に読みました！！また読みに来ます！この作品に巡り合えて幸せです。本当にありがとうございます！ (2019年2月9日 21時) (レス) id: f1af7a443b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うすしおタルト | 作成日時：2018年8月26日 19時
