第53話 ページ13
「もしも椛が、あの死柄木弔のところに行こうとしてるなら、僕は全力で止めるよ」
覇気を含んだ声が鼓膜を揺らす。
「椛が、僕のことを嫌いじゃないなら…」
好きだよ。
好きだったよ。
「僕の『好き』に答えてくれなくてもいいから…」
届かない『好き』を唱える。
でもね、気づいちゃったんだ。
これは『憧れ』だったって。
「椛さえよければ、僕に守らせてほしい」
出久が私を抱き締める力が強くなる。
好きだよ、出久。
でも、
「お願いだから、君の側に…っ」
「…ごめん」
「………椛？」
出久に向けて答えたはずの声は震えていた。
「ごめんね…」
再度そう言うと、出久が私を抱き締める力を弱める。
出久の指先が、わずかに震えていた。
「出久…」
掠れた声が、喉を通り過ぎる。
「…私もね、出久が好き
「…っ」
うしろで出久が息を呑んだ音が聞こえた。
好き『だった』。
自分でもびっくりした。
十七年間想い続けていると思っていた幼なじみに、過去形で告白する日が来るだなんて。
「でもね、多分もう好きになれないと思うんだ…」
「…うん」
出久の何かを悟ったような返事が部屋に消える。
「私は…っ、もう弔以外の人を、好きになれないんだと思うんだ…っ」
「…っ、うん…」
言ってしまった。
遅すぎた。
出久まで傷つけた。
何でもっと早く気づかなかったんだろう。
いつの間に弔が私の心を埋めつくしていたんだろう。
どこか気だるげで、少し子どもで、わがままで、敵連合の長で。
普通に暮らしてたら、絶対逢わない人。
「心配させたのに…」
でも、逢ってしまった。
「ごめんね」
好きになってしまっていた。
「私は、弔のところに帰らなきゃ…っ」
「………うん」
きっともう、自分ではどうしようもないくらい好きになっている。
きっと誰にも、弔にだってどうしようも出来ないくらいに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 637人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
暁稀 - これこそ純愛。YES純愛。黒霧さんイケメン過ぎて禿げました、どうしてくれるんですかありがとうございます！ (2021年8月13日 3時) (
レス) id: 5c3eb28485 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 最高すぎます！！ (2019年12月29日 2時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
budou(プロフ) - やばすぎた。読んでるだけやのに幸せ... (2019年10月13日 7時) (レス) id: bca9c6f33f (このIDを非表示/違反報告)
チイナ(プロフ) - もう号泣でした。涙がぽろぽろ溢れ出てきて、あーいい作品に出会ったなぁ、と感じました。私の大好きな作品に追加です！このような作品をお作りいただきありがとうごさいます！また読み返しに来ます。 (2019年7月15日 8時) (レス) id: f759a37db1 (このIDを非表示/違反報告)
琴(プロフ) - はじめまして。何度も何度も読み返してその度に感動させられて、こんな小説久々に読みました！！また読みに来ます！この作品に巡り合えて幸せです。本当にありがとうございます！ (2019年2月9日 21時) (レス) id: f1af7a443b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うすしおタルト | 作成日時：2018年8月26日 19時
