第50話 ページ10
「出久！起きて！何で私ここに居るの！？」
「あわわわっ！椛、落ち着いて…っ、僕起きてるから…っ」
『起きてる』だなんて言いながら、未だ瞳をぼんやりとしか開けていない出久の肩を『これでもか！』と言うくらい揺さぶった。
「何で！弔は！？」
「椛…っ、落ち着いてえ〜！」
私が肩を強く揺さぶりすぎたせいで変にビブラートのかかった出久の声を聞きながら、手を離した。
「お、おはよう椛…」
「うん！おはよう！」
出久への朝の挨拶もそぞろに、『早く！』と視線で訴えると、一つ大きな息を吐いたのちに出久が口を開いた。
「…昨日の夜のことは覚えてる？」
「ごめん…、割と記憶にない」
「そっか…」
私の不確定な返答すら、出久は丁寧に飲み込んで口を開く。
「椛が、死柄木弔に誘拐された時のことは覚えてる？」
「…うん」
出久の言葉に静かに頷いた。
正確には誘拐じゃないんだけど。
私が拒まなかっただけ。
「僕はそのあと、警察や雄英の先生に事情を話して、捜査を依頼したんだ」
やっぱり、出久はそうするよね。
「うん…、ニュースで見た」
「…うん。でも、捜査に進展がないまま三日が過ぎた時、僕の部屋に黒いゲートが開いたんだ」
黒霧さん。
私があの部屋に閉じ込められてる時に、出久のところに来ていたんだ。
「USJで見た敵が目の前に現れて、正直体が動かなかった。でもあの人は…、僕に危害を加えようとせず必死に懇願してきたんだ」
『お願いします、緑谷出久。彼女を…、椛さんを助けてください…っ！私がここに連れてきますから…っ。椛さんにも、貴方にも危害は加えませんから…っ！どうか…っ！』
「敵連合にとって『敵』に当たる僕に、泣きながら懇願してきたんだ…」
どうして？
「詳しいことはその時聞いたよ」
どうしてそんなに、
「ずっと、『椛さんを助けてください』の一点張りで…」
優しいんですか？
「僕が承諾したら、しばらくしてから椛を連れて来てくれて…」
『普通に暮らしていいんです』
『口外して頂かなければ結構ですから』
『幸せに暮らしてください』
もう、
何が『敵』なのか分からない。
一粒の涙が頬を伝った気がした。
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暁稀 - これこそ純愛。YES純愛。黒霧さんイケメン過ぎて禿げました、どうしてくれるんですかありがとうございます！ (2021年8月13日 3時) (
レス) id: 5c3eb28485 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 最高すぎます！！ (2019年12月29日 2時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
budou(プロフ) - やばすぎた。読んでるだけやのに幸せ... (2019年10月13日 7時) (レス) id: bca9c6f33f (このIDを非表示/違反報告)
チイナ(プロフ) - もう号泣でした。涙がぽろぽろ溢れ出てきて、あーいい作品に出会ったなぁ、と感じました。私の大好きな作品に追加です！このような作品をお作りいただきありがとうごさいます！また読み返しに来ます。 (2019年7月15日 8時) (レス) id: f759a37db1 (このIDを非表示/違反報告)
琴(プロフ) - はじめまして。何度も何度も読み返してその度に感動させられて、こんな小説久々に読みました！！また読みに来ます！この作品に巡り合えて幸せです。本当にありがとうございます！ (2019年2月9日 21時) (レス) id: f1af7a443b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うすしおタルト | 作成日時：2018年8月26日 19時
