第五話 ページ7
【鶴丸side】
俺は主の想いの切っ先を知っている。
それは俺じゃなくて。
もちろん、加州や大和守、和泉守、堀川、明石、蛍丸、長谷部、薬研、光坊でもない。
主は、
とうの昔に失った初期刀を、今も想い続けている。
『いや、いや…だっ、待、って…っ！や、山姥、切…、山姥切っ！』
顕現された俺にまともに挨拶もせず飛び出して行くものだからそのあとを追うと、俺の新しい主は、淡く光を放ちながら空中を舞う桜の花びらを掻き抱いて、恐らくこの本丸の刀剣男士であろう奴の名前を呼び続けながら泣いていた。
『何処…、山姥切、何処行ったの…？ねえっ！』
居るはずもない。いや、厳密には主の腕の中に居る彼を探す様に辺りを見渡す。それでも居ないとすぐに分かり、落胆して肩を落とす。
その姿が、あまりにも憐れで、小さくて、声を掛けていた。
『なあ、きみ』
『…な、んですか？』
主は涙でぼろぼろになった顔をこちらに向け、小さく返事をする。
『きみが抱いているその桜は、この本丸に居た刀の事かい？』
『…そう、です』
『神気があまり感じ取られないが、他の刀達は居ないのか？』
『…この、一振り、だけです…』
主は力無くそう答えると項垂れた。『やっぱり、先に手入れしてれば』とか『何が『平気』だ、全然平気じゃないじゃん』とか。腕の中の桜に散々文句を言う主に、こんのすけですら掛ける言葉を見つけられない。
『初期刀か？』
『…はい』
主は一層、桜を強く抱き締めて答える。
『無愛想で、口数が少なくて、いつも顔を隠してて、ちょっとビビりで…。でも優しくて、いつも側に居てくれて、嬉しかった…』
主の小さな唇から綴られる言葉に一つ一つ頷く。
『なあ、主』
『主』と一言呼ぶと、主は涙で潤んだ瞳をこちらに向け、俺の言葉を待つ。
『生憎俺は、無愛想でなければ、口数も少なくない。顔を隠すこともあまりしないし、ビビりと言うか、人に驚きを与えるのが好きだ』
まだ俺の言いたい事を理解出来ていない主は首を傾げる。
『その代わり、優しくすると約束しよう。いつだってきみの側に居る、だから…』
だから、
『俺を、きみの『初期刀』にしてくれないかい？』
主は、大粒の涙を流して、俺の胸に飛び込んだ。幼子のように、声を上げて泣いていた。
『なあに、心配するな。刀剣男士が桜を出す時は幸せな時と聞いている』
その言葉に主が頷く。
『彼も幸せだったさ』
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紫苑(プロフ) - うすしおタルトさんの作品大好きです!『好きです、和泉一織くん。』も最高でした!! (2022年1月23日 9時) (
レス) id: c54a88bcf6 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 号泣しました（ ; ; ）この小説を読んでもっともっと鶴丸が好きになりました！こんな素敵な小説書いてくださって本当にありがとうございました！ (2019年2月17日 13時) (レス) id: 749d380e6b (このIDを非表示/違反報告)
莉奈 - 涙が止まらない！でも他の皆は？ハッピーなのかバットエンドなのか｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡ (2019年1月22日 0時) (レス) id: aaa5551089 (このIDを非表示/違反報告)
るみ奈 - 読みながら、ただひたすら涙が止まりませんでした…。超感動しました！多分これまでで一番かもしれないです。鶴さん大好きです。これ読んだら、より好きになりました。他の作品も頑張ってください！応援してます！ (2018年10月12日 1時) (レス) id: 47df6e8b39 (このIDを非表示/違反報告)
Rose(プロフ) - 完結お疲れ様です！こんなに泣いてしまった夢小説は初めてです。語彙力が無さすぎて伝えきれないんですけどとりあえずありがとうございました！これからも応援しています！ (2018年7月20日 1時) (レス) id: e1b4e7d96d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うすしおタルト | 作成日時：2018年4月18日 19時
