第三十話 ページ32
「落ち着いた？」
「…はい、すみませんでした」
そう言いながら体を離すと、『あー、白藤ちゃんがあ…』なんて言いながら、紫苑さんは名残惜しそうに空気を抱き締める。
「お陰で、すっきりしました」
満足そうに微笑む紫苑さんに、私の頬も緩む。
「あ！笑った！」
「大袈裟ですよ…」
「そんなことないよ！」
ニコニコと笑った紫苑さんが私の手を取る。
「白藤ちゃんあんまり笑わないからさ、レアだよ！」
そう言われて首を傾げる。そんなに笑ってないかな？
「
私がそう言うと、紫苑さんは目をぱちくりさせて、今日一番の顔で微笑む。
「盛大に惚気けたなー！」
「え、惚気け？」
「無自覚！？」
『ちょっと、騒がしいですよ』と返すと、あまりに賑やかだったのか、鶴丸が襖を開けて入ってくる。
「主、部屋の外まで聞こえてるぞ」
「それ私じゃなくて、紫苑さんね」
「え！そんなにうるさかった？」
「嗚呼、うるさいな」
『ちょ！鶴丸さん酷い！』と、紫苑さんが叫び出したのを皮切りに、更に騒がしくなる。
鶴丸よ、注意喚起しに来たのではないのか。
なんてツッコミは飲み込んで、騒ぎ出す二人を眺めた。
「全く、俺の主をあんなに長い時間独占するだなんて」
「鶴丸さんのものじゃありませーん」
「審神者長のものでもないだろう」
「いや！絶対私の方が白藤ちゃんのこと好きだし！」
「何を言う！俺だって負けるものか！」
段々恥ずかしくなってきた。
「ねえ、その話まだ終わらない？」
その『主/白藤ちゃん可愛い議論』にいたたまれなくなって声を掛けるけど、二人ともやめる気配はない。
「主、失礼するよ」
「はーい」
襖の向こうから心地良い声が聞こえて返事をすると、燭台切がゆっくりと入ってきた。
「審神者長の本丸から、三日月宗近が迎えに来てるんだけど」
「じゃあ、紫苑さん引っ張ってくるね」
『うん、お願いね』と優しく微笑んで部屋を出ていく燭台切の背中を眺めてから、紫苑さんに声を掛ける。
「紫苑さーん、三日月が迎えに来てるみたいですよー」
「まじか！流石近侍！」
そう言うと、紫苑さんは鶴丸を置き去りにして駆け寄ってくる。
「お見送りは大丈夫だよ。玄関までの道は覚えてるから。じゃあね！」
それだけ言うと、嵐の様にそそくさと部屋を出ていく。
「相変わらず、すごい人だな」
「そうだね」
部屋に残された私たちは、ただただ顔を見合わせて笑った。
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紫苑(プロフ) - うすしおタルトさんの作品大好きです!『好きです、和泉一織くん。』も最高でした!! (2022年1月23日 9時) (
レス) id: c54a88bcf6 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 号泣しました（ ; ; ）この小説を読んでもっともっと鶴丸が好きになりました！こんな素敵な小説書いてくださって本当にありがとうございました！ (2019年2月17日 13時) (レス) id: 749d380e6b (このIDを非表示/違反報告)
莉奈 - 涙が止まらない！でも他の皆は？ハッピーなのかバットエンドなのか｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡ (2019年1月22日 0時) (レス) id: aaa5551089 (このIDを非表示/違反報告)
るみ奈 - 読みながら、ただひたすら涙が止まりませんでした…。超感動しました！多分これまでで一番かもしれないです。鶴さん大好きです。これ読んだら、より好きになりました。他の作品も頑張ってください！応援してます！ (2018年10月12日 1時) (レス) id: 47df6e8b39 (このIDを非表示/違反報告)
Rose(プロフ) - 完結お疲れ様です！こんなに泣いてしまった夢小説は初めてです。語彙力が無さすぎて伝えきれないんですけどとりあえずありがとうございました！これからも応援しています！ (2018年7月20日 1時) (レス) id: e1b4e7d96d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うすしおタルト | 作成日時：2018年4月18日 19時
