第一話 ページ3
審神者になった日の夢を見た。
政府から任命され、わけも分からないまま行われた適性検査では『霊力:普通』と診断され、なんとも言えない気持ちになったのを覚えている。
そのうえ、生まれて初めて保持が許された初期刀は、輝くような金髪と、綺麗な海のような碧眼で息を呑んだ。
思わず『綺麗』と呟くと、彼は頭に掛けられていた薄汚れた布を目深に被り、
『綺麗とか、言うな…』
と小さな声で告げた。
審神者になってからの日々は目まぐるしく、その一日一日に彼がそばにいてくれたのを覚えている。
霊力が至って普通の私はまずはレベルを上げることに専念していた。
先輩の審神者達に演練を組ませてもらって、毎日のように傷だらけで帰ってくる彼の手入れに追われていた。
そんな生活を繰り返したある日、やっと出陣しても申し分ないレベルになった時、彼を出陣に向かわせた。
ところがいくら待っても彼は帰ってこず、時間だけが刻々と過ぎてゆく。
日も沈みかけた頃、今まで見たこともない大怪我をした彼が帰ってきた。
『な、にこれ…、て、手当…っ』
『俺は、良いから…、これを…』
手当をしようと彼の手を引くと、『そんなものは良い』と言うように出陣で手に入れた上質な素材を私に渡してきた。
『鍛刀、できるんだろ…？写しの俺なんかより、早く、新しい刀を…』
そう言って彼は横に転がり、
『こんな傷…、少し休めば平気だ…』
少しだけ微笑んで、そう告げた。
なぜこの時、彼の言葉を呑んでしまったんだろう。
初めて見た笑顔だったからだろうか？
それでも、
今思えば、叫びだしたくなる程、懺悔したくなる程、この時の判断は間違っていると、あとになって気付く。
こんのすけにも手伝ってもらって行った鍛刀は思いのほか体力を消費し、時間も掛かった。
それでも初めて鍛刀した刀は、それはそれは美しく、儚く、真っ白に輝いて見えた。
新しい刀剣男士との挨拶もそぞろに彼の手当をするべく鍛刀部屋の扉を開けると、
『…え』
そこには彼の姿は無く、
『…や、山姥、切…？』
呼んでも返事は無く。
『…う、そ』
ただそこには、
『…い、いや…』
桜の花びらだけが舞い踊っていた。
『いやぁぁぁぁああああっ！』
私はその花びらを集めて、胸の中で掻き抱いて、ただただ泣き叫んだ。
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紫苑(プロフ) - うすしおタルトさんの作品大好きです!『好きです、和泉一織くん。』も最高でした!! (2022年1月23日 9時) (
レス) id: c54a88bcf6 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 号泣しました（ ; ; ）この小説を読んでもっともっと鶴丸が好きになりました！こんな素敵な小説書いてくださって本当にありがとうございました！ (2019年2月17日 13時) (レス) id: 749d380e6b (このIDを非表示/違反報告)
莉奈 - 涙が止まらない！でも他の皆は？ハッピーなのかバットエンドなのか｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡ (2019年1月22日 0時) (レス) id: aaa5551089 (このIDを非表示/違反報告)
るみ奈 - 読みながら、ただひたすら涙が止まりませんでした…。超感動しました！多分これまでで一番かもしれないです。鶴さん大好きです。これ読んだら、より好きになりました。他の作品も頑張ってください！応援してます！ (2018年10月12日 1時) (レス) id: 47df6e8b39 (このIDを非表示/違反報告)
Rose(プロフ) - 完結お疲れ様です！こんなに泣いてしまった夢小説は初めてです。語彙力が無さすぎて伝えきれないんですけどとりあえずありがとうございました！これからも応援しています！ (2018年7月20日 1時) (レス) id: e1b4e7d96d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うすしおタルト | 作成日時：2018年4月18日 19時
