43−これから ページ45
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ピンク色に輝く小ぶりのダイヤモンド。
それが午後の太陽に照らされて眩しく煌めいている。
勢いよく実弥を見遣る。
思惑を含んだ顔で此方を見つめていた。
「実弥…これ…」
「校則禁止だったろォ」
「……っそうじゃなくて!」
「ん? 俺とお揃い」
そう言って実弥は左手を私の手に絡めてきた。
その薬指には、同じデザインのシルバーのリング。
事態が急で上手く飲み込めない。
心臓の爆動が止まらない。
「これ……婚約指輪…」私の言葉に、実弥は優しい笑みを深めた。
「いつも支えてくれて有難うなァ」
「……支えられてるのは……私の方だよ……!」
「まァた泣く」
泣くに、決まってるよ。
柔らかく包んでくれる実弥の体温が暖かい。
その腕に抱かれて幸せが全身から溢れ出そうだ。
実弥が、「手出せ」とポケットを弄る。
まだ何かあるの? 大人しく手を出すと、実弥は手のひらサイズの鍵を私に差し出した。
「……? 何の鍵?」
「合鍵」
「……………どこの?」
「俺の家」
「え、」
「お前の大学近い所にマンション借りたァ」
「……」
すん、と気持ちが冷静になる。
指輪も貰って、合鍵ももらって。
私逆に、彼に何をお返しできてる?
それに、大学に近い所なんて。大学から実弥の勤務先は車で30分はかかる。
「……貰えないよ…」
「……迷惑か?」
「違う…合鍵なんて貰ったら…私、毎日会いに行っちゃう。……実弥に迷惑かかっちゃうの、やだ…」
暫く黙り込む実弥。
沈黙が怖くて手を握り締めた時、上から「何言ってんだ」と声が降ってきた。
「その合鍵はお前が帰る為に渡した。会いに来るモンじゃねェ」
「……え?」
「__同棲しよう。…A」
たったその二文字だけで、もう彼しか見えなくなった。
周りの空気も、音も遮断して、目の前の実弥しか入らない。
思い返せば、前世にもこんな感情を覚えてる。
_実弥と結婚した時だった。
「……いいの…? 私子供だし…実弥にいっぱい、迷惑かけちゃうよ…! 我儘言うし…寂しがりだし…」
「全部知ってらァ。前世で何年一緒に暮らしたと思ってんだ」
たかが同棲、されど同棲。
また溢れそうな涙を必死に堪えて貰った合鍵を両手で握り締めた。
実弥が、…大好きな人が、私の頬に触れる。
「愛してる、A。二人で暮らそう」
__大切な人からの、一生忘れない愛の言葉。
これから、二人の日々が始まる。
fin.
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yukino(プロフ) - 実弥と幸せになれていて嬉しいです! 作品,とっても面白かったです!私,最近アカウント作ったばっかりなのであれですが,「OLは夢を見ない」めっちゃ愛読してました! 本当にどの作品もとても面白いです!!!! (2022年1月17日 19時) (レス) @page47 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 嗚呼、前世でも、今世でも実弥のお嫁さんになれるなんて幸せです!伊之助との三角関係が面白かったですが、リクエストで鬼の猗窩座とか無理ですかね?千寿郎とかも、出来たらお願いしたいです (2021年3月15日 17時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
ぬれおかき(プロフ) - おそらまめさん、私の学校にもどうか不死川先生を召喚してください(^^)/かっこよすぎて酸欠(^_-)-☆ (2021年2月7日 13時) (レス) id: dde5b1dc7f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、この作品にも足跡を残して頂きありがとうございます!作者の作品を沢山お気に入りして下さってたんですね、嬉しいです…!どれも拙いなりに一生懸命時間をかけて執筆しているので、そのお言葉が何より身に染みます…!ありがとうございます(^^) (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - こちらも、おそらまめ様の作品だったんですね!いや、かなりお気に入りしていて今更気づきました(笑)愛ある作品の数々、語彙力あって背景が浮かんで、もう虜です!←いきなり出てきて熱弁をお許し下さいm(_ _)m (2020年11月26日 13時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年2月12日 13時