39−決断 ページ41
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「それにしても俺たちが卒業だなんて想像もつかないな」
炭治郎の言葉に、わちゃわちゃしていた空気は一変して寂しい雰囲気が場を取り繕う。
…みんな、それぞれ進路が違うんだ。
炭治郎は実家を継いで、伊之助はスカウトされたモデルに。カナヲは華道の専門学校へ行く。玄弥はプロの射的選手を目指す。
「……みんなそれぞれ行きたい道が決まってるんだよね」
「Aだって大学へ進学するんじゃないか」
「うん、そうだけど……」
私はてっきりみんなが大学へ行くんだと思っていた。
いつまでもこの関係を崩したくなくて、ずっとみんなと一緒に居たくて、善逸が通う4年制の大学を受験した。
受験勉強に勤しんでいたから知らなかったんだ。
みんながいつの間にか自分の道を決めて歩いていて、私だけがただ漠然とみんなとずっと一緒に居れるんだと、それだけを機動力に頑張っていた。
「――…心配しなくても、A」
「…!」
「自然と自分のやりたい事が見つかるよ」
いつの間にか善逸の柔らかい手が私の頭に乗っていた。
それを初めに、炭治郎の手も善逸のそれに重ねられるように乗っけられる。
だめだ。泣いちゃいそう。
「_……大学に行けばみんなとまた一緒に居れると、思ってたんだ。だけど、みんないつのまにか先を行ってて、…寂しかった」
「そっかあ」
「本当はね、私ね」
「みんなと離れるのが、すごく寂しい」
側にいても、聞こえるか否かの大きさだった。
だけど確かにみんなはそれを掬い上げてくれて、カナヲが溢れ出た私の涙を拭ってくれる。
「…私も寂しい。A」
「カナヲ」
「お前何でもう一生会えねぇみたいな言い方すんだよ」
側に居た伊之助が不可解そうに眉を潜めて仁王立ちしていた。
「会いてぇと思ったら会ったらいいじゃねぇか」
「伊之助…」
「そうだぞA。俺は大学にも行かねェし連絡くれりゃすぐ飛んでくぜ」
「…私も。飛んでいく」
「えへへへ。俺はAとあと3年はずっと一緒だよう」
「A。我慢する事なんてない! 俺たちはAの親友なんだから」
暖かい。
初めは少し複雑だった居心地がいつの間にか当たり前になっていた。
その当たり前を、終わらせなくてもいいんだ。
「……みんな大好き」
「知ってるぞ!」
「オイ炭治郎…」
少しだけ大人になれた気がして、胸を張って前に進もうと思えた。
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yukino(プロフ) - 実弥と幸せになれていて嬉しいです! 作品,とっても面白かったです!私,最近アカウント作ったばっかりなのであれですが,「OLは夢を見ない」めっちゃ愛読してました! 本当にどの作品もとても面白いです!!!! (2022年1月17日 19時) (レス) @page47 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 嗚呼、前世でも、今世でも実弥のお嫁さんになれるなんて幸せです!伊之助との三角関係が面白かったですが、リクエストで鬼の猗窩座とか無理ですかね?千寿郎とかも、出来たらお願いしたいです (2021年3月15日 17時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
ぬれおかき(プロフ) - おそらまめさん、私の学校にもどうか不死川先生を召喚してください(^^)/かっこよすぎて酸欠(^_-)-☆ (2021年2月7日 13時) (レス) id: dde5b1dc7f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、この作品にも足跡を残して頂きありがとうございます!作者の作品を沢山お気に入りして下さってたんですね、嬉しいです…!どれも拙いなりに一生懸命時間をかけて執筆しているので、そのお言葉が何より身に染みます…!ありがとうございます(^^) (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - こちらも、おそらまめ様の作品だったんですね!いや、かなりお気に入りしていて今更気づきました(笑)愛ある作品の数々、語彙力あって背景が浮かんで、もう虜です!←いきなり出てきて熱弁をお許し下さいm(_ _)m (2020年11月26日 13時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年2月12日 13時