26−逃げ場がない ページ27
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――先生を避けようと思えば思うほど、先生との遭遇率は高くなった。
何とかしのいだ月曜日を嘲笑うかの様に火曜日は朝からまた校門で鉢合わせ。
3日連続の数学の授業後には必ず何か言いたげに口を開く不死川先生を尽く私は無視をした。
「桜田」
「トイレ行こ!」
「なァ」
「それでね」
「桜、」
「炭治郎〜」
――今日は先生を授業以外で無視して丸々1週間。
ようやく金曜日だ。長かった。
私の体力は正直言って皆無に等しかった。
これ以上先生を無視し続ける精神は、無い。
「炭治郎、今日先帰ってくれる?」
「どうしたんだ?用事か?」
「ううん、テスト近いから残って勉強する」
「そうか。偉いな。帰りは気をつけて帰るんだぞ」
少し帰りを遅らせれば、先生と鉢合わせる事も無い。
弱い脳で必死に考えた結果が、人の居ない図書館だった。
先生が帰るだろう17時になるまで勉強して残っていれば、先生には会わないし勉強は出来るし一石二鳥だ。
「……」
英語の教材を開いて暫くして、うとうとと眠気が襲う。
静か過ぎる図書館では、勉強が捗ると同時に眠気と戦うのに苦闘した。
―…気付けば突っ伏して眠っていた。
慌てて時計を見ると10分程進んでいる。あまり眠ってなかった事に若干の安堵を覚える。
「…?」
少し離れた席にはさっきまで無かった筈の深緑の筆箱が存在していて無意識に首を傾げていた。
特に気にする事も無く、眠気を覚まそうと立ち上がって本棚へ向かう。
「…ん、」
高い所に興味のある本を見つけて手を伸ばしたがあと少し足りなくて届かない。
まいっか、と諦めて手を下ろそうとした時。
背後に影が出来て間も無く上からぬっと大きな手が御目当ての本を取った。
「これかァ?」
「……っ、」
何でいるの。
いろんな感情が混ぜ合わさって口から心臓が飛び出そうなぐらい大きく爆動した。
そんな気露も知らずに背中からは低くて格段に苛立った声がドスッと降ってくる。
「よォ探したぜ桜田ァ………散々俺から逃げて楽しかったかィ」
「……っ」
「態々逃げ場のねェ所に隠れてよォ…もう観念しろやァ」
先生が屈む気配がして、次には耳元で低い声がそう告げる。
両側には先生の手。前には本棚、背中は不死川先生。
やらかした。声を上げても誰も居ない。
何も言わない私をそのままに、不死川先生はまた私の耳元で低く囁いた。
「お前覚えてんだろォ」
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yukino(プロフ) - 実弥と幸せになれていて嬉しいです! 作品,とっても面白かったです!私,最近アカウント作ったばっかりなのであれですが,「OLは夢を見ない」めっちゃ愛読してました! 本当にどの作品もとても面白いです!!!! (2022年1月17日 19時) (レス) @page47 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 嗚呼、前世でも、今世でも実弥のお嫁さんになれるなんて幸せです!伊之助との三角関係が面白かったですが、リクエストで鬼の猗窩座とか無理ですかね?千寿郎とかも、出来たらお願いしたいです (2021年3月15日 17時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
ぬれおかき(プロフ) - おそらまめさん、私の学校にもどうか不死川先生を召喚してください(^^)/かっこよすぎて酸欠(^_-)-☆ (2021年2月7日 13時) (レス) id: dde5b1dc7f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、この作品にも足跡を残して頂きありがとうございます!作者の作品を沢山お気に入りして下さってたんですね、嬉しいです…!どれも拙いなりに一生懸命時間をかけて執筆しているので、そのお言葉が何より身に染みます…!ありがとうございます(^^) (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - こちらも、おそらまめ様の作品だったんですね!いや、かなりお気に入りしていて今更気づきました(笑)愛ある作品の数々、語彙力あって背景が浮かんで、もう虜です!←いきなり出てきて熱弁をお許し下さいm(_ _)m (2020年11月26日 13時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年2月12日 13時