24−思い違い ページ25
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「不死川、いるか?」
滅多に職員室に顔を出さねぇ奴を迎えに数学準備室の戸を開ける。
本棚に囲まれた死角が多いこの教室の窓際で、散乱した資料の周りに奴はいた。
椅子に座ってぼうっと窓の外を眺める不死川は俺の存在に気付いてない。
もう一度名前を呼ぶと驚いた顔と目が合った。
「宇髄。…何か急用かァ?」
「あぁ。飲み行こうぜ」
「…それのどこが急用だよォ。今日は飲む気分じゃねェ」
「いーや付き合ってもらうぜ!お前は派手にAを泣かせたって罪があんだろ」
Aの名を出した途端急に萎れた花の様に生気を失って不死川は項垂れた。
それからぽつりと「………振られたわァ」と一言。
「…振られた?…いや、聞いてねぇけど」
「……Aと話したのかァ」
「ああ。Aの口振りじゃまるでお前に振られたみたいだったけどな」
「んなわけねェだろォ。……俺が彼奴を、振るわけ」
…こいつらはどうしてこうもすれ違いが起きるんだ。
お互い思い合ってるのに奇妙にそれが思い違って傷ついて、傷付けてる。
二人共不器用なのは相変わらずだな。
「……だったら何でお前は彼奴に返事してやらねェんだよ。前世の嫁だろ? 今も好きなんだったら真剣に向き合ってやれよ」
「……………昔と今とじゃ勝手が違ェだろォ。
今は職業も歳もまるで別だァ。教師の俺が何も知らねェ彼奴に手ェ出したら信用に関わる」
憔悴した顔で不死川は弱々しくそう続ける。
こんな不死川見た事ねェ。
「あれだけ言われてこれ以上どうしろってんだァ…
手に入れたくても、彼奴の目に写ってんのは教師の俺だ」
「…いや、彼奴は教師のお前の中に……昔の不死川をずっと重ねてると思うけどな」
「ンなわけねーだろォ。記憶があんのは俺だけだ」
「…お前何言ってんだよ
_Aは全部覚えてんぞ」
「………………は?」
不死川が目をかっ開いて俺を見た。
まさかこいつ本当に知らなかったのか?
そーいやAも不死川が記憶あんのは知らねェ感じだったよな。
…成る程。此奴らが好きあってる癖にすれ違う原因が分かった。
「今日Aが俺になんて言ったと思う?
――…実弥には、幸せになって欲しい、だとよ。
お前を幸せに出来んのは派手に唯一無二なのにな」
「……宇髄」
「ん?」
「やっぱ今日飲み行けねェ」
「…………しゃーねェなー」
結局今世も俺がお前らの恋のキューピットか。
派手に悪くねェがな。
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yukino(プロフ) - 実弥と幸せになれていて嬉しいです! 作品,とっても面白かったです!私,最近アカウント作ったばっかりなのであれですが,「OLは夢を見ない」めっちゃ愛読してました! 本当にどの作品もとても面白いです!!!! (2022年1月17日 19時) (レス) @page47 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 嗚呼、前世でも、今世でも実弥のお嫁さんになれるなんて幸せです!伊之助との三角関係が面白かったですが、リクエストで鬼の猗窩座とか無理ですかね?千寿郎とかも、出来たらお願いしたいです (2021年3月15日 17時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
ぬれおかき(プロフ) - おそらまめさん、私の学校にもどうか不死川先生を召喚してください(^^)/かっこよすぎて酸欠(^_-)-☆ (2021年2月7日 13時) (レス) id: dde5b1dc7f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、この作品にも足跡を残して頂きありがとうございます!作者の作品を沢山お気に入りして下さってたんですね、嬉しいです…!どれも拙いなりに一生懸命時間をかけて執筆しているので、そのお言葉が何より身に染みます…!ありがとうございます(^^) (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - こちらも、おそらまめ様の作品だったんですね!いや、かなりお気に入りしていて今更気づきました(笑)愛ある作品の数々、語彙力あって背景が浮かんで、もう虜です!←いきなり出てきて熱弁をお許し下さいm(_ _)m (2020年11月26日 13時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年2月12日 13時