22−幸せを願う ページ23
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「……何でそうなるわけ?」
「もう決めたんです」
私が立ち上がったと同時にチャイムが鳴った。
振り向けば宇髄先生は真剣な顔して私を見ていた。
「……実はさっき伊之助から告白されました」
「あ?」
「実弥じゃなくても、私幸せになれるって、思ってます。それに、いつまでも私なんかが付き纏ったら、実弥の、邪魔になっちゃうから」
「……お前それ本気で言ってんのか」
大丈夫、私笑えてる。
上手く空気が吸えなくて、必死に昔の呼吸をしてた。
近くにいるはずの宇髄先生の姿が歪んで見えない。
「その方が、不死川先生も幸せです」
「…、」
「宇髄先生ありがとうございましたっ」
ぺこりとお辞儀をして顔をあげる。
最後に見えた宇髄先生は酷く傷ついた顔をしていた。
じくじくと痛む心臓と脳を無視して教室へ戻った。
「―…彼奴が幸せになれんのは…お前だけなんだよ」
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7限の授業が終わってぞろぞろと帰宅する。
炭治郎が迎えに来てくれたけど、私は一緒に帰る気になれなくて断った。
「伊之助」
「…!……ンだよ」
「お話聞いて」
炭治郎達が来ても机に突っ伏したままだった伊之助に話しかける。
未だ不機嫌そうに顔を逸らす伊之助は、椅子の上に胡座をかいて私の言葉を待ってくれているみたいだった。
「ありがと、伊之助。あのね。気持ち凄く嬉しい」
「……!」
「私も伊之助の事好きだよ」
頬杖ついてそっぽを向いていた伊之助と目が合った。
嬉しそうな顔がいたたまれない。
「でも、ごめん」と私が続ける。
伊之助ははた、と固まって眉を寄せた。
「………また、アイツかよ」
「うん。ごめん」
「何で……俺じゃ…ダメなんだよ……
アイツは…お前を泣かせてばっかりだろ…」
「うん」
「………俺はお前を…泣かせねぇ」
「――伊之助が、泣いてどうすんの」
俯いた前髪の隙間から確かに滴が落ちた。
些か震える声と体、堰を切ったようにぽたぽたと溢れるそれ。
しゃがみこんでそっと濡れた頬を撫でればびくっと肩を揺らして、目が合った。
「伊之助は大切な私の親分で…友達だよ。だけどそれ以上じゃない。
自分の幸せを等閑にしてまでも幸せを願う人は…一人しかいないから」
「……お前、それ」
「私は実弥が幸せだったらそれでいいから」
伊之助が何か言いたげにカッと開かれた口は、発される事は無く。…暫く黙りこんでようやく「だったら、」と呟かれた。
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yukino(プロフ) - 実弥と幸せになれていて嬉しいです! 作品,とっても面白かったです!私,最近アカウント作ったばっかりなのであれですが,「OLは夢を見ない」めっちゃ愛読してました! 本当にどの作品もとても面白いです!!!! (2022年1月17日 19時) (レス) @page47 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 嗚呼、前世でも、今世でも実弥のお嫁さんになれるなんて幸せです!伊之助との三角関係が面白かったですが、リクエストで鬼の猗窩座とか無理ですかね?千寿郎とかも、出来たらお願いしたいです (2021年3月15日 17時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
ぬれおかき(プロフ) - おそらまめさん、私の学校にもどうか不死川先生を召喚してください(^^)/かっこよすぎて酸欠(^_-)-☆ (2021年2月7日 13時) (レス) id: dde5b1dc7f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、この作品にも足跡を残して頂きありがとうございます!作者の作品を沢山お気に入りして下さってたんですね、嬉しいです…!どれも拙いなりに一生懸命時間をかけて執筆しているので、そのお言葉が何より身に染みます…!ありがとうございます(^^) (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - こちらも、おそらまめ様の作品だったんですね!いや、かなりお気に入りしていて今更気づきました(笑)愛ある作品の数々、語彙力あって背景が浮かんで、もう虜です!←いきなり出てきて熱弁をお許し下さいm(_ _)m (2020年11月26日 13時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年2月12日 13時