20−拗れる ページ21
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「……授業始まってんだろうが。二人してサボりかァ? あ?」
「不死川、先生」
「お前に関係ねぇだろ」
「…ハ、1限は俺の数学だ。それを見過ごせってェ? 早よ教室戻れやァ」
壁に凭れて此方を睨む先生。
対して私は伊之助に肩を掴まれているから身動きが取れない。
伊之助は彼の姿を見てあからさまに不機嫌な顔をした。
「……チッ、今お前の顔見たくねェ」
「伊之助どこ行くの!」
「サボる!!!」
悪態ついて階段を上がって行った伊之助。
伊之助を追いかけようと立ち上がった直後、先生が此方に向かってきて私の手を少し乱暴に引いた。
「…?せ、先生教室…」
手を引かれて先生は階段を降りていく。
静かな廊下に私たちの足音が響いて心臓がどくどく脈打つ。
いつもより怖い顔した彼が入ったのは、この間勉強を教えてもらった数学準備室。
そのまま手を引かれてぴしゃん、と強く扉を閉めたかと思うと、先生が私を壁際に押しつけた。
鈍い音がして、背中に僅かな痛みが走る。
「っい、」
「………………お前は…」
「せん、せ」
「彼奴に簡単に触らせて…俺より先に彼奴におはぎを食わせてよォ……一体どういうつもりだァ」
「お前が好きなのは俺だろうが…!」
漸く合った目は酷く怒りに透けていた。
何で先生が怒ってるの。だって、だって貴方は。
「……そっちが…ガキには興味ないって…くだらないって言った癖に……」
「……」
「どうして…こうやっていつも私の事かき回すの…!」
時代は変わっても変わらない。
貴方は変わったかもしれないけど、私の心は変わらなかった。何百年とずっといつまでも、実弥だけを思っていた。
忘れられた人の気持ちなんて、分かんないもの。
「―…実弥に私の気持ちなんて分かんないよっ…!」
「…!」
「苦しいし、痛い…っ変に優しくされるから期待して…だけど実弥は思わせぶりな態度ばっかで…っ
私には今も昔も実弥しかいないのに…!」
緩まった手を解いて彼の両肩を押す。
放心した実弥を忘れる様に、私は飛び出して教室の戸を勢い良く閉めた。
暫く走って、中庭で座り込む。
今更になって自分に嫌気がさして涙がこみ上げてきた。
「……うぅっ……」
私って本当に可愛くない。
先生なんかを本気で好きになって…相手になんか、される訳ないのに。
振り回されてる自分が嫌になる。
「―……お前、Aか?」
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yukino(プロフ) - 実弥と幸せになれていて嬉しいです! 作品,とっても面白かったです!私,最近アカウント作ったばっかりなのであれですが,「OLは夢を見ない」めっちゃ愛読してました! 本当にどの作品もとても面白いです!!!! (2022年1月17日 19時) (レス) @page47 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 嗚呼、前世でも、今世でも実弥のお嫁さんになれるなんて幸せです!伊之助との三角関係が面白かったですが、リクエストで鬼の猗窩座とか無理ですかね?千寿郎とかも、出来たらお願いしたいです (2021年3月15日 17時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
ぬれおかき(プロフ) - おそらまめさん、私の学校にもどうか不死川先生を召喚してください(^^)/かっこよすぎて酸欠(^_-)-☆ (2021年2月7日 13時) (レス) id: dde5b1dc7f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、この作品にも足跡を残して頂きありがとうございます!作者の作品を沢山お気に入りして下さってたんですね、嬉しいです…!どれも拙いなりに一生懸命時間をかけて執筆しているので、そのお言葉が何より身に染みます…!ありがとうございます(^^) (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - こちらも、おそらまめ様の作品だったんですね!いや、かなりお気に入りしていて今更気づきました(笑)愛ある作品の数々、語彙力あって背景が浮かんで、もう虜です!←いきなり出てきて熱弁をお許し下さいm(_ _)m (2020年11月26日 13時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年2月12日 13時