ごはん 和華 ページ24
「ですよね〜!おかわりはいっぱい有りますから、たーんと食べて下さいー!」
白衣の少女が大きな声で言う。なんか漫画のオカンみたいだ、と和華は思った。
かちゃかちゃと、箸と食器の当たる音が鳴る部屋の中で突然、
「そういえば、もぐもぐ。あなたは、はむはむ。お名前を聞いてなかったですねもっきゅもっきゅ」
ご飯と鮭の切り身を口いっぱいに頬張りながら、夏が声を上げる。和華はその様子を見兼ねて、「まずは飲み込め」と水を差し出す。
「私ですか?確かにまだ名乗ってませんでしたね。
私は桜井美咲と言います。花の桜に井戸の井、美しく咲くと書いてさくらいみさきです。」
「お三方のお名前は?」と付け足し、白衣の少女…もとい桜井美咲は、自分の胸を手で指しながら名乗る。
その言葉を聞いて、夏が
「私は新崎夏です。よろしくお願いします。」
と、玲雷が
「わたしは音原玲雷!漢字は…忘れたけどよろしく〜!」
と名乗ったので、和華も不承不承口を開いた。
「私は呉月和華と言います。呉っていうのは…鎮守府の名前、っていえば分かりますかね。天体の月に、和風の和に難しい方の華でくれつきわかです。」
「夏さん、玲雷さんに和華さんですね!良い名前です!」
美咲は両手を胸の前で合わせ、花が開くように目や口を見開く。
玲雷が「マジか…!ドンピシャリじゃん」と呟いていたが、和華は意味がさっぱり分からない。
和華は黙々とご飯と鮭を口へと送り込む。やはり美味しいが、調理法を知らなければもっと美味しかったに違いない。
ふと、和華は部屋の様子に目を止めた。なんだか我楽多ばかりの部屋で、何に使うかも分からないような実験器具(?)がそこかしこに散らばっていた。典型的な実験没頭タイプの科学者か、と和華は溜め息を吐く。こんなでは集中なんて出来なかろうに。
「というか、桜井さんは何でこんな僻地に店を構えているんです?こんな里から離れた変境地、人なんて中々来ないと思いますが、何か理由が?」
和華が、気になっていたことをそっと聞く。夏と玲雷は、「そういえば」と言いたげな表情。
ひた隠しにしていた過去を引きずり出されたような顔をする美咲は、「そう、ですね」と、ゆっくりと下を向き、指をくるくる回しながら瞑目する。
美咲は覚悟を決めたように顔をあげ、三人に向かって笑いかけた。しかし、その笑顔は寂しげで、ぼろぼろで、暗い過去を神父に懺悔する迷える子羊のようにも見えた。
「まずは、私の能力から説明した方が良いでしょうか。」
桜色の少女は、ぽつりぽつりと言葉を紡ぎ始める。
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鈴@suzu(プロフ) - さっきさん» 6巻の方の話なんですけど、空夜さんって操られてる側ですかね?お話に使いたいので。返信は遅れても大丈夫です。 (2020年10月23日 16時) (レス) id: 04b7ddb7ca (このIDを非表示/違反報告)
サナティ(プロフ) - 続編の作成完了しました! (2020年10月20日 17時) (レス) id: 249d9050a8 (このIDを非表示/違反報告)
サナティ(プロフ) - 臨海凛師さん» 分かりました!それじゃあ続編作成しまーす! (2020年10月20日 17時) (レス) id: 249d9050a8 (このIDを非表示/違反報告)
臨海凛師(プロフ) - サナティさん» 良いですよ!! (2020年10月20日 17時) (レス) id: ad2c0a2c17 (このIDを非表示/違反報告)
サナティ(プロフ) - 臨海凛師さん» 了解しました! (2020年10月20日 16時) (レス) id: 249d9050a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サナティ x他4人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2020年6月13日 20時