白銀の錬金術師と動かない大図書館 --------ヴァネッサ ページ9
赤を孕んだ上品な照明がぽつぽつと空間を照らしている。古い本の香りがそこかしこに漂うここは紅魔館の大図書館である。
ふと、芳しい匂いが鼻腔をくすぐった。ゆっくりと事典から顔をあげると、赤髪赤目の少女__小悪魔が紅茶を机に置くところだった。それを見た少女、ヴァネッサは悠然と微笑んでみせた。
ヴァネッサは見た目年齢7歳の所謂幼女である。知的な煌めきを宿すエメラルド色の瞳と、幼さを隠しきれない顔立ちが絶妙なバランスで成り立っており、それに加えて病的なまでに白い肌に、桜を塗ったような愛らしい唇。まごうことなき美幼女である。黒を基調にしたゴシックロリータに身を包み、左目にモノクルを、傍に杖を携えている。
「ありがとう、こあ。君の紅茶はいつも美味しいから嬉しいよ………おや、今日はハーブティーなんだね」
「ご名答でち、ヴァネッサ様。此方、カモミールティーでち」
琥珀色のハーブティーに手を伸ばすと同時に、ヴァネッサは目の前で本を一心不乱に読んでいる友人、パチュリー・ノーレッジに声をかけた。
「そら、パチェも本に噛り付いてないで飲みたまえよ。折角の紅茶が冷めてしまうぞ」
「………………後で」
余程本に集中しているのだろう。帰ってきた返事に意識がない。しかし冷めてしまっては勿体ないと親切心でヴァネッサは声をかける。
「なぁ知っているかパチェ。カモミールティーにはリラックス効果やアレルギー症状の緩和、その他生理痛緩和に加えカモミールに含まれている『アズレン誘導体』という物質には、粘膜を保護したり皮膚を健康的に保ったりする効果も確認されて」
「うるさい!飲むから黙ってて!」
ペラペラと喋り続けるヴァネッサから逃れたい一心でパチュリーは本から目を離し、紅茶に口をつけた。瞬間、ふわっと優しい味が口内に広がって。舌の上でカミツレを味わいながら二人は時を過ごす。
その内、思い出したようにヴァネッサはポツリと話題を提供した。
「そういえば。最近外来人が来たそうじゃないか。彼らについて何か知っているかい?パチェ」
それを聞いたパチュリーは視線をカモミールティーに向けたまま、素っ気なく一言だけ「知らない」と答えた。
「全く知らないわ。確かラルハが様子を見に行ったそうだけど…。それ以外はさっぱり」
「そうかそうか。知らない、か………」
ゆらり、とヴァネッサの唇が弧を描いた。
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サナティ(プロフ) - 星猫さん» 鬼滅の刃、暗殺教室、ブラッククローバー、ヒロアカ、約ネバ、進撃の巨人、刀剣乱舞とかその他もろもろですよ。 (2020年1月13日 15時) (レス) id: 249d9050a8 (このIDを非表示/違反報告)
サナティ(プロフ) - 続編の作成完了しました!リンクはります! (2020年1月13日 14時) (レス) id: 249d9050a8 (このIDを非表示/違反報告)
サナティ(プロフ) - 更新しました!後続編を作ります! (2020年1月13日 13時) (レス) id: 249d9050a8 (このIDを非表示/違反報告)
サナティ(プロフ) - 更新します! (2020年1月13日 13時) (レス) id: 249d9050a8 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - サナティさん» サナティさんの質問です。 (2020年1月13日 9時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サナティ x他2人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2019年7月15日 18時