検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:72,357 hit

5-1 ページ17

「…なあ、なんか騒がしくないか?」

里見君が怪訝な顔で上を見上げた。

資料室にいる私達の上にあるのは、美術準備室だ。

大勢がバタバタと動く足音。
「蓮!」と中尾君を呼ぶ水越さんの声。

「みんなが美術準備室に入ってる…?」

嫌な予感がした。

みんながここに入ることを先生が許すはずがない。
まさか先生…

上に上がろうと梯子に駆け寄る私の手を、中尾君が掴んだ。

「駄目だ。先生にはここで待ってるよう言われてる」

「でも…!」

私がそう叫んだ時、

キィ、とハッチが開いた。

中から水越さんが顔を覗かせる。

「みんな生きてる!」という声。
湧き上がる歓声。

それがとても遠く聞こえた。

水越さんが梯子を降りてくる。

「…何、その手」

水越さんの視線が、中尾君と繋がれた私の手に注がれた。
私は弁解する余裕もなく水越さんを問いただす。

「ねえ、なんでここに来れたの?先生は?」

「ブッキーが教室で倒れて、相澤にロック解除してもらったから…ねえそれより何で蓮と」

私はみなまで聞かずに駆け出していた。

梯子を登って、みんなの間を突っ切って準備室を抜け、美術室を抜け、教室に走り込む。

それにはさくらと、床に横たわる先生の姿があった。

ひゅっと心臓を掴まれた気がした。

「先生!」

思わず叫んでいた。
先生の顔は真っ青で血の気がなかった。

「先生! 先生!」

駆け寄って肩を揺すってみても、何度名前を呼んでも、先生の目は開かない。

私は縋るようにさくらを見る。

「さくら、先生は…」

「さっき突然苦しみ出して… 倒れたの」

崩れ落ちるように先生の横に膝をついた。

どうしよう。

このまま目を覚まさなかったら、どうしよう。

溢れる不安が冷気のように私の心を取り囲んで、凍らせていく。
手を拳の形に握り込む。
指先がとても冷たい。

もしこのまま、先生が死んでしまったら…?

そんなの嫌だ。

また大切な人が、私の前から消えてしまう。

目の前の景色が歪んで、滲んだ。
堪えきれなくなった涙が頬を滑り落ちる。

「A…」

泣いている私を見て、さくらは頭を撫でてくれた。
その優しい手つきにほっとして、段々涙は引いていった。

「A、大丈夫?」

「…うん」

頷くと、さくらは安心したように眉を下げた。

「Aよかった無事で…ほんとによかった」

さくらの目は少し潤んでいた。

5-2→←4-終



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (38 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
170人がお気に入り
設定タグ:3年A組 , 菅田将暉 , 柊一颯
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

さな×りお(プロフ) - 緑えいたぁーさん» えぇ…ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです更新頑張ります! (2019年5月3日 20時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
緑えいたぁー(プロフ) - さなさんとりおさんの書くお話が大好きです!いつも楽しみにしています!もしかしたら歳近いんじゃないかな〜って思ったりしたりしなかったり…御二人のファンとしてずっーと応援してます! (2019年5月2日 22時) (レス) id: 847f0c09f1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月24日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。