検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:72,345 hit

4-11 ページ11

扉の前で上がった息を整えていると、中から先生の声が聞こえてきた。
その声はしっかりとしていたから、ひとまずほっとして胸を撫で下ろす。

先生は誰かと話しているようだ。
相手の声は聞こえないから、多分電話している。
これ、入っていいのかな、電話の邪魔にならないかな、と扉の前で逡巡していると、

「…ですから、入院の話はお断りしたはずです」

え?

思わず声に出してしまいそうで、慌てて手で口を塞ぐ。

入院って、先生そんなに具合悪いの?

心臓がバクバクと脈打っている。
それを中にいる先生に悟られないように、息を落ち着かせる。

これは聞いてはいけない話だ。
そう思ったけど、私の両足は強力な磁石でくっついたように動かなかった。
駄目だと分かっていながら、両耳に全意識を集中させる。

「オピオイドもまだ残ってますから」

目の前の景色がぐにゃりと歪んだ気がした。

オピオイド。私はその名前を知っていた。
鎮痛剤の名前だ。

癌の。

膝に力が入らない。
口を塞いでいた手も、いつの間にかだらりと下がっている。

「…はい。残り1年、宜しくお願いします」

先生はそう言い終えて電話を切った。

残り1年、てなんですか。
なんですか、先生。

ガラ、と力任せに扉を開けた。

4-12→←4-10



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (38 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
170人がお気に入り
設定タグ:3年A組 , 菅田将暉 , 柊一颯
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

さな×りお(プロフ) - 緑えいたぁーさん» えぇ…ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです更新頑張ります! (2019年5月3日 20時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
緑えいたぁー(プロフ) - さなさんとりおさんの書くお話が大好きです!いつも楽しみにしています!もしかしたら歳近いんじゃないかな〜って思ったりしたりしなかったり…御二人のファンとしてずっーと応援してます! (2019年5月2日 22時) (レス) id: 847f0c09f1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月24日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。