4-8 ページ8
「おい里見、蒼井!
お前ら来ないからあと明太子しか残ってねえぞ」
中尾君がしかめっ面で私達を呼ぶ。
「…げ」
「まじか」
「でもいいよ俺、明太子好きだし」と里見君は袋に手を伸ばす。
おにぎりを2つ取り出して、片方を私に渡してくれた。
「ほい」
「あ、ありがと」
お礼を言って受け取った…けど。
…明太子かぁ。
私辛いの苦手なんだよなぁ。
里見君に話し掛けるタイミング間違えたかな。
すると目の前に、昆布おにぎりが差し出された。
「…え」
差し出したのは瀬尾君だった。
「これやるから、その明太子寄越せ」
「え、どうして」
「辛いの苦手って顔に書いてある」
…そんなに顔に出てた?
なんか恥ずかしいな。
「ありがとう」
ありがたく昆布おにぎりを受け取った。
なんだかA組に馴染んできてるみたいで嬉しかった。
最初は、さくら以外取り付く島もないって感じだったのに。
「あ、そういえば」
瀬尾君は明太子おにぎりの包装をぴりぴりと剥がしながら訊いた。
「内通者じゃないなら、蒼井はなんで俺達と一緒に先生の話を聞かなかったんだ?」
「別のクラスだったからじゃないかな…?
先に準備室で話は聞いたよ。
私を呼び出した理由と、これ以上景山さんみたいな犠牲者を出さないために立てこもってるって」
そう言うと、瀬尾君は少し怪訝な顔をした。
怪訝、というか、少し考え込む素振りを見せた。
「…てことは、蒼井は聞いてないのか?」
「何を?」
訊きながら、もしかして、と思った。
先生は、あの事をみんなに打ち明けたんだろうか。
そして私だけ準備室に残して別に話をしたのは、その事実を2回も私に聞かせたくなかったからなのか。
瀬尾君は躊躇うように視線を彷徨わせ、口ごもる。
私はそれだけで、瀬尾君が何を言おうとしてるのか分かってしまった。
「蒼井は知ってるのか? ブッキーの病気のこと」
短く一言、答えた。
「知ってるよ」
170人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さな×りお(プロフ) - 緑えいたぁーさん» えぇ…ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです更新頑張ります! (2019年5月3日 20時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
緑えいたぁー(プロフ) - さなさんとりおさんの書くお話が大好きです!いつも楽しみにしています!もしかしたら歳近いんじゃないかな〜って思ったりしたりしなかったり…御二人のファンとしてずっーと応援してます! (2019年5月2日 22時) (レス) id: 847f0c09f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月24日 22時