5-終 ページ38
「そんなことないです」
私は言った。
心臓がおかしなテンポで脈打っていた。
先生は顔を上げて、その瞳に私を映した。
「先生はかっこいいです」
声に必死さが滲んでしまって、出任せを言っているんじゃと思われるのが気にかかった。
でもそれは紛れもなく本心だった。
「さくらも諏訪さんも私も、先生に救われました。
きっと宇佐美さんや里見君だって。
かっこ悪くなんてない。
先生は、最高にかっこいいです」
こんな言葉で足りるだろうか。
本当は先生の傍に行って、抱き締めて、もっと温かい言葉を掛けたかった。
でも実際の私は、生徒として適切な距離から、自分の考えを伝えることしかできない。
それが歯痒くて、悔しくて、情けなかった。
それでも、
「ありがとう」
と先生は笑ってくれた。
「お前がそう言ってくれて…嬉しいよ、本当に」
眼鏡の奥の瞳が震えて、僅かに潤んだ、気がした。
私が立ち上がった時、
「…お前は、どこまでも真っ直ぐだな」
ぼそりと先生が呟いた。
それは私に向かってというよりは独り言のようで。
それがどういう意味なのか、
先生がどんな気持ちでそう言ったのか、
私にはよく分からなかった。
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さな×りお(プロフ) - 緑えいたぁーさん» えぇ…ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです更新頑張ります! (2019年5月3日 20時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
緑えいたぁー(プロフ) - さなさんとりおさんの書くお話が大好きです!いつも楽しみにしています!もしかしたら歳近いんじゃないかな〜って思ったりしたりしなかったり…御二人のファンとしてずっーと応援してます! (2019年5月2日 22時) (レス) id: 847f0c09f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月24日 22時