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「怖い思いをさせて、すまなかった」

最初に先生は謝った。

「そんなことないです」

私は首を振った。

「信じてました」

そう言って笑ってみせる私に、先生は「知ってた」という風に軽く頷いた。

「ありがとう」

シンプルな一言が、ただただ嬉しかった。

信じてよかった。
本当に。

「今からちゃんと話す。
俺の目的と、どうしてお前を呼んだのか」

先生は床に座り、私に「座れ」と椅子を指さした。

私は先生にならって床に正座した。
自分だけ椅子に座って先生を見下ろすのは落ち着かないし、先生と同じ目線で話がしたかった。

「…じゃあ、話すぞ」

先生は私を見据えた。
その真剣な目に、私は背筋を伸ばした。

「俺の目的は、景山が殺された真相を白日の下に晒すことだ」

「景山さんは自 殺したんじゃないんですか…?
誰に殺されたっていうんですか?」

「それを探すんだ。
まだ事件は終わってない。
ここで解決しなければ、第二第三の犠牲者が出る。
実際、景山の他に被害に遭った知り合いもいる」

昨日、突然先生の携帯に掛かってきた電話を思い出した。

「それって、文香さんですか?」

「…そうだ」

「恋人なんですか?」

思い切って訊いた。

「恋人、だった」

だった。過去形。
たった3文字で、こんなにほっとする日が来るとは思ってなかった。

「彼女は教師だったが、その被害に遭ったことが原因で精神を病み、今は休養している」

そこまで言って、先生は俯いた。

「俺は近くにいたのに、何もしてやれなかった」

最後の言葉は独り言に近かった。
なんて声を掛ければいいか分からなくて、私も一緒に俯いてしまう。

先生が事件を起こしたのは、これ以上景山さんのような犠牲者を出さないため。それは間違いないだろう。

でも、それだけではないような気がした。

何もしてやれなかった文香さんへの贖罪。
そういった意味合いも、その言葉には込められているように思えた。

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さな×りお(プロフ) - 緑えいたぁーさん» えぇ…ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです更新頑張ります! (2019年5月3日 20時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
緑えいたぁー(プロフ) - さなさんとりおさんの書くお話が大好きです!いつも楽しみにしています!もしかしたら歳近いんじゃないかな〜って思ったりしたりしなかったり…御二人のファンとしてずっーと応援してます! (2019年5月2日 22時) (レス) id: 847f0c09f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月24日 22時

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