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先生の額にはタオルが置かれていた。
水色のタオル。
多分さくらのものだ。
触れてみると、少しぬるくなっている。

「タオル、かえた方がいいかな」

腰を上げようとすると、さくらが慌てて立ち上がった。

「私がやるよ。A足怪我してるし」

「…あ」

色々とありすぎてすっかり忘れていた。
今まで意識していなかったけど、梯子を駆け上がって走ってきたんだ。
足首が思い出すようにずきんと痛む。

「じゃあ…さくらお願い」

さくらの背中を見送って、私は先生と2人取り残される。

さくらは「ごめん」と私に謝っていた。
私はさくらの身代わりになろうとしたのに、自分は何もできなかったって。

謝られた時、少し心が痛かった。
私がさくらを庇ったのは、自分の為でもあったから。

あの時私は、怖かったんだ。

さくらが死んでしまうことだけじゃない。

さくらを見殺しにすることが怖かった。
さくらを見殺しにする自分が怖かった。

何もできない自分を、許せなかった。
私のせいで、さくらが死んでしまうと怯えていた。

それを正直に言わない私は、卑怯者なんだろうか。
こんなんだから、先生にふられちゃうのかな。

先生の、閉ざされた瞼を見つめる。

もし、今キスをしたら。

おとぎ話みたいに、目を覚ましてくれないだろうか。
男女逆だけど。

そんなことする勇気もないくせに、心の片隅で呟いてみる。

あ、でも駄目だ。

おとぎ話でキスをして目を覚まさせるのは、眠っている人の運命の人、恋に落ちる相手だと決まっている。

私じゃ駄目だ。

悲しくなって、再び膝に顔を埋める。

自分で勝手に妄想して自分で勝手に悲しくなって、何やってんだろ。

そんな私に、

「1人になれる場所もねえのかよ」

責め立てるような声が突き刺さった。

…こういうのを、泣きっ面に蜂っていうのかな。

振り返ると、諏訪さんが不機嫌な顔でこちらを見ていた。
不機嫌な顔のまま、どん、鞄を机に打ち付けた。
何かあったのかな。いつも以上に荒れていた。

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さな×りお(プロフ) - 緑えいたぁーさん» えぇ…ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです更新頑張ります! (2019年5月3日 20時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
緑えいたぁー(プロフ) - さなさんとりおさんの書くお話が大好きです!いつも楽しみにしています!もしかしたら歳近いんじゃないかな〜って思ったりしたりしなかったり…御二人のファンとしてずっーと応援してます! (2019年5月2日 22時) (レス) id: 847f0c09f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月24日 22時

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