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「中尾君の手」を見た甲斐君達が怯え、去っていった。
先生が準備室に入ってきた。
「それって…」
「なーんちゃって」
先生は悪戯っぽい笑みを浮かべて、「手」を机に放った。
触れてみると、明らかに無機質な手触りでほっとする。
「やっぱり先生、中尾君のこと殺してないんですね」
「それはどうかな」
先生は、はっきりとした答えを避けた。
先生は椅子に座り、瓶から何かを取り出して、口に入れた。
「…先生それ、」
「蒼井」
パソコンに向き合いながら、先生は言った。
「お前はおにぎり派か?パン派か?」
「…どちらかというと、おにぎり派です」
「そうか」
先生のスマホが鳴った。
「グッドタイミング」
先生は電話に出た。多分警察の人だろう。
短い会話をして、電話を切った。
「今からおにぎりを貰いにいってくる」
「…ほんとに警察に会いに行くんですか?
おにぎりの為だけに」
「まあな」
身支度を始める先生に、私は声を掛ける。
「私は教室に戻った方がいいですか?」
「今日はここで安静にしていろ」
そう言われて、正直ちょっとほっとした。
甲斐君や諏訪さん達がいるあの空間に戻るのには勇気が要った。
「じゃあ行ってくる」
ひら、と先生は手を振って、去ろうとして、
「…蒼井、視線が痛いな」
苦笑気味に私を振り向いた。
多分私は、穴が開く程先生を見つめていたんだろう。慌てて先生から視線を外す。
「どうした?」
「行ってくるって先生、どこから出ていくんだろうって思って」
1日目に爆弾で退路を塞がれたと説明を受けたはずだ。
「見ないで、って言ったら?」
「多分見ます。気になります」
ふう、と先生が困ったように溜息をついた。
爪先の向きをこちらへ転換する。
「蒼井、ちょっと目閉じて」
「…どうしてですか?」
「変なことはしないから。ほら早く」
仕方なく目を閉じると、目に布があてがわれた。
頭の後ろでしゅるしゅると布を結ぶ気配がする。
目隠しされているのか、これは。
「戻ってきたら外すから」
思ったよりも耳の近くで声がして、肩をびくりと震わせた。
先生の動きが一瞬止まる。
そのまま先生の気配が離れていった。
「じゃあ行ってくる」
靴音が遠ざかっていく。
ガタ、と何かが開く音がした。
聴覚に意識を集中させて、音が聞こえる方向を探る。
下の方から聞こえた気がした。
床に、下の階へと続く扉でもあるんだろうか。
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さな×りお(プロフ) - 雨傘 空さん» 勿体ないお言葉…!ありがとうございます!!とっても励みになります! (2019年4月13日 12時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
雨傘 空(プロフ) - 文章表現がとても好きです……!いつも更新たのしみにしています。作者さんの無理のないペースで、これからも応援しています! (2019年4月13日 8時) (レス) id: 04590a81f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月7日 13時