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「みんな、不運にも爆発に巻き込まれてしまった、蒼井Aだ。これからみんなと一緒に、人質になってもらう」
「…蒼井Aです」
転校生がきたようなノリで私を紹介する先生。
それに合わせて名乗り会釈してみせるけれど、私は勿論転校生なんかじゃないし、「おー、これからよろしくな」となるはずもなく。沈黙が訪れて、少し悲しくなった。
すごすごとさくらの元へ戻る。
私の紹介が済むと、先生はまだ状況が飲み込めない私達に説明した。
爆弾によって退路を絶たれたこと。
同じような爆発が、至る所に仕掛けられていること。
「分かったら、みんな席につこうか。蒼井は茅野の隣に。これ使って」
私は先生に渡された椅子を受け取り、さくらの隣に腰掛けた。
私達が席につくのを見て、先生は教壇から降りた。窓の外を見て楽しそうに笑う。
「おー走ってる走ってる。もう2,3個爆発させないと緊張感でないと思ってたけど、結構みんな必死に逃げてくれてるねえ」
先生が背を向けた瞬間、示し合わせていたように、みんなが一斉にスマホを取り出す。
「はい携帯ストップ!」
先生は振り向きもせずに言った。この状況で生徒達がどんな行動に出るか、始めから分かっていたようだった。
「今から、みんなの携帯電話と鞄を回収する」
先生は袋を取り出し、教室を一周する。
鞄のない私は、スマホだけ手渡した。先生と目を合わせるのが怖くて、顔を上げることができなかった。
「なんでこんなことを」
さくらが鞄を袋に入れながら訊く。
「一体、何が目的なんですか」
「気になるよなあ」
先生は袋を置き、教壇の上に戻った。
教卓に両手をついて生徒達を見渡す。
「みんなが人質になったのには理由がある」
タイミングを見計らったようにチャイムが鳴った。
「はいきりーつ」
誰も動こうとしない。
「起立だよはい、きーりーつー」
急き立てるように、先生は右手で机を叩く。それでも、誰も立とうとしない。その場の空気に呑まれて、私も動くことができなかった。
先生が左の袖をまくり、腕時計を掲げた。
すると弾かれたように1人が立ち上がった。
それにつられてみんなも、バラバラと席を立つ。
「今から、俺の授業を始める。礼」
起立の時と同じことが、もう一度繰り返された。その光景から、今まで3年A組がどんなクラスだったのかが透けて見えた。
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さな×りお(プロフ) - かなとさん» 指摘していただきありがとうございます。訂正いたしました。 (2019年4月1日 18時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年4月1日 16時) (レス) id: 977ff24faa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月1日 15時