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先生は顔を上げた。
この話に区切りをつけるように立ち上がると、美術準備室へと消えていった。
少し経って、白い球を片手に戻ってきた。
先生はそれを机の上に置いた。窓から差し込んだ夕日が球を照らし、楕円の影を形作っている。
「まずは、これを描いてみよう」
「はい」
「それじゃあ最初に、鉛筆と、練り消し」
「練り消し？」
先生は鉛筆1本と白い塊1つを、私の手に乗せた。この白い塊が、練り消しだろうか。小学校の頃、消しかすから作って遊んでいたものと違って、結構固くてゴムみたいだった。
「この練り消しは、消しゴムみたいなもんですか？」
「そう。あんまり力入れると画用紙が傷つくから、優しく使って。あと鉛筆」
先生は鉛筆を指さした。デッサン用の鉛筆も、私が知っている鉛筆と若干違った。細長くて、先が鋭く尖っている。
「デッサン用の鉛筆は持ち方から違う」
「…」
「今、めんどくさいって思っただろ」
「バレましたか」
先生は呆れたように笑うと、鉛筆を握ってみせた。
「こうやって、親指と人差し指、中指で鉛筆をつまむ感じ」
見よう見まねでやってみる。
でも、シャーペンで持つ癖がついている分、なかなか上手くいかなかった。
「そこはもうちょっと人差し指を…」
先生は手を伸ばしかけて、少しためらった。
私が女子生徒だから気を使っているんだろうか。
そういうところは配慮するんだ、と思った。
「…難しいですね」
初歩の初歩でつまづいてしまって、少し情けなかった。
上手くいかないのを誤魔化すように笑ってみせた私に、柊先生はふう、と溜息をついた。そして、その手を私の手に重ねた。
思ったよりも大きくて骨ばっていて、どきりとした。
「なんでそんな、不器用なんだろうな」
「…すみません」
今度は心から出た言葉だった。
「昔から色々と要領が悪くて」
「いや、まあそれもそうなんだけど」
否定してはくれないのか、と心の中で突っ込む。
「無理に笑うのが下手だなと思って」
「…そうですか？」
「作り笑いだってバレバレ」
先生は、にかっと笑ってみせた。それが作り笑いなのかは分からなかったけれど、なんだか眩しくて、直視できなかった。
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さな×りお(プロフ) - かなとさん» 指摘していただきありがとうございます。訂正いたしました。 (2019年4月1日 18時) (
レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年4月1日 16時) (レス) id: 977ff24faa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さな×りお | 作成日時：2019年4月1日 15時
