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目の前には、瓦礫の山が広がっていた。
剥がれた天井が垂れ下がり、むき出しの鉄材が突き出ている。
あまりにも非日常的な光景を前に、私は1人立ち竦んでいた。
カチャ、と音がした。
隣のA組のドアが開き、生徒が廊下になだれ込んできた。みんなも私と同じように、呆然と瓦礫の山を見つめる。
寸断された電線から火花が散って、誰かから悲鳴があがった。
「A?」
人だかりの中から声が上がった。さくらだった。知っている人を見つけて、少し安心する。
「さくら」
「どうしてここに?」
「……お腹が痛くてトイレにこもってたんだけど、凄い音がして。出てきてみたら…」
2人して再び瓦礫に視線を向ける。
「なにこれ…」
「爆弾だよ」
声が降ってきた。
振り返ると、先生が机の上に立って、こっちを見下ろしていた。
先生と視線が交錯する。
何が起こっているか分からず困惑する私を、先生は静かな瞳で見つめていた。
「誰か!!」
何人かが、瓦礫に向かって助けを呼ぶ。
「むーだーだーよ」
叫び声をかき消すように、先生は声を張り上げた。
「みんな自分のことに必死でそこどころじゃない」
先生は、何を言っているんだろう。
それは、生徒を爆発の被害から守ろうとする教師の台詞じゃなかった。むしろ…
「…先生、どういうことですか?」
私は先生に訊いた。
できるだけ期待を込めて。
そんなはずないと、自分に言い聞かせて。
「蒼井」
先生は私を見下ろして言った。とても冷たい声で、背筋が寒くなった。
「不運だな、お前も今から人質だ」
それは紛れもなく、犯罪者の台詞だった。
爆破した張本人が、先生だと知る。
「さあさあ」
先生はパンパン、と手を叩いた。
「教室に戻ろうか。
…また爆発しないうちに」
脅迫じみた言葉に押されるように、みんなはぞろぞろと教室へ戻っていく。混乱している私に、さくらは手を差し伸べた。
「Aも行こう」
「…うん」
その手を取った。さくらの手は、微かに震えていた。
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さな×りお(プロフ) - かなとさん» 指摘していただきありがとうございます。訂正いたしました。 (2019年4月1日 18時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年4月1日 16時) (レス) id: 977ff24faa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月1日 15時