残虐 ページ10
鬼舞辻無惨という男は、残酷な男である。
良心、なんていう言葉は彼の辞書からはとうの昔に削除済みだろう。まず、存在さえしていたのか分からないが。
人を殺すことに躊躇がない。欲望に素直だ。
鬼化した直後でさえ、人の血肉を欲するのは人を喰えば解決するためたいした問題ではないと言ってのけたほどだ。
そんな極悪非道の具現化のような無惨が生命を持ってして初めて駆られた感情。
少女が欲しい。傍でその声で名前を呼んで欲しい。
柔い手で己の手を握っていて欲しい。
湧いて出てくる欲望に抗うなど到底無理な話だった。勘違いも相まって無惨は動き出した。
自分の指に傷をつける。
力を込めるとじわじわ土地が滲み出す。
「A、口を開けろ」
「.........??ふぁい、ほぅぞ?」
告白劇によって目覚めた頭ではその行為の異常性を理解できたが、大して難題でもないのに断るのは酷だろう。傷口に塩を塗るような真似だ。
Aは不思議に思いながらも素直に口を開けた。頭には大量の疑問符が飛び散っている。
素早く無惨の人差し指が口に滑り込む。
驚き、急いで口を閉じるがそれはすでに遅く、Aの喉に無惨の血が流れ込んでしまった。鋭い爪が咥内に傷を作りそこへも血が滲んでいく。
「っ!?ん、ぁっ!?!……」
「心配するな。直ぐに馴染む」
血を呑み込んだのを確認し惜しみながらも指を引く。もう少し己の指を咥える様子を目にしていたいがAが血に耐えられずに絶命してしまっては意味がない。
「っ!!!ぅ、ぁあ」
喉元を押さえ、苦しそうに背中を丸めるA。
無惨はその様子を恍惚な表情で眺め、自分と同じ存在へと変化していくさまを心待にしていた。
鬼化した直後の飢餓状態に陥ったとしても、呑気に眠る食糧が転がっている。それを食い尽くせばいいだろう。
そのあとに我が城に連れていき、永遠の刻を共にしよう。
己は何て機転が利くのだろう、自負する無惨。
Aの手で邪魔な家族を排除できる。記憶が戻ったとしても、Aが縋ることのできる者は無惨だけとなる。
大丈夫、鳥籠の中の小鳥のように一生大切にしてやる。
不死身の身体を手に入れた私達を引き裂くものは何も無い。
無惨は想像を膨らませていき、形のいい唇は緩く弧を描く。
己の血がAの心身共に拒否されることなど疑う余地もなかった。
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佳恋(プロフ) - 氷柱 氷龍さん» ございます!救済しましょうかねwこれからもご愛読よろしくお願いします!! (2020年8月4日 11時) (レス) id: 052cbbf88a (このIDを非表示/違反報告)
氷柱 氷龍 - お願いしますカナエさんを出来れば死なせないでください!面白いです!w(゜o゜)w<WOW (2020年8月1日 17時) (レス) id: bd22a3d64d (このIDを非表示/違反報告)
佳恋(プロフ) - dinner bornさん» あ!そうですごめんなさい!途中で設定変えたんです!直しときます!! (2020年5月23日 16時) (レス) id: 49831120ad (このIDを非表示/違反報告)
dinner born - 父親は他界済みとあるのに、ページ12には父親が1番に目を覚ましていました。 これは、作者のミスでしょうか.........? (2020年5月23日 15時) (レス) id: 1da8ba8178 (このIDを非表示/違反報告)
佳恋(プロフ) - 光華さん» ですよね!煉獄さんは神ですから死んで欲しくないですよね、、(切実)柱続行は無理でも、必ず死なせません!!笑コメントありがとうございます!励みになります!! (2020年5月13日 9時) (レス) id: 49831120ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佳恋 | 作成日時:2020年4月25日 13時