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後悔 ページ43

「部屋一つ。仮眠だけ取ったら出ていく予定です」
「鬼狩り様ですね。お勤め御苦労様でございます」



藤の花の家紋が掲げられた暖簾をくぐり、立派な作りの屋敷へと行き着く。義勇は直ぐ様出迎えた老婆に短く用件を伝え、遠慮がちに入っていく。

ちなみに老婆が混乱してしまうかもしれないため、Aは小さくなって木箱の中だ。



「こちらでございます」




案内された部屋には布団と着流し一式が用意されていた。Aにも着替えさせてやりたいが、もう一着貰うのは不自然だろう。義勇の分をやってもいいが、サイズが合わない。




「A、出てきていいぞ」
「むー、む!」


そっと床に木箱を下ろし、開く。箱から半身は収まったままのAがのそりとこちらを覗く。
手招きすると箱から這い出て、忽ち十四歳の姿形に戻っていく。口枷を外してやると、にこりと微笑んだ。




風呂を頂いてから着流しを身につけ、布団に転がる。Aも横に滑り込んだ。一人用の布団だから二人で寝たら広くはないが、久しぶりに触れる自分ではない誰かの温度は全然悪くなかった。






「(一体何人ほど、鬼の犠牲になったのだろう)」



倒したばかりの鬼のことを考える。弔われる人は一体何人ほどいたのだろう。





俺がもう少し早く行っていれば。
一週間、三日、一日。
ほんの少しでも救える命はあったかもしれない。







布団を握る手に力が込められ、皺が寄る。







あと、少し。



俺が、







もっと早く鱗滝さんの元で鍛錬していたら、









もういない親友の笑顔を鮮烈に蘇る。









ガバッと勢いよく上体を起こす。自分の不規則な呼吸の音しか聞こえない。時を巻いて戻す術はない。考えても無駄なこと。







いつも、




脳にこびりついている。









俺のせいで死んだ姉、




俺が弱いから死んだ親友、








誰も彼も俺が強かったら救えた人達だ。







否、違う。









俺がいなかったら______








バチン、







頬に衝撃が走った。









「ぎゆ、う」





苦々しいAの表情が目に映った。

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佳恋(プロフ) - 氷柱 氷龍さん» ございます!救済しましょうかねwこれからもご愛読よろしくお願いします!! (2020年8月4日 11時) (レス) id: 052cbbf88a (このIDを非表示/違反報告)
氷柱 氷龍 - お願いしますカナエさんを出来れば死なせないでください!面白いです!w(゜o゜)w<WOW (2020年8月1日 17時) (レス) id: bd22a3d64d (このIDを非表示/違反報告)
佳恋(プロフ) - dinner bornさん» あ!そうですごめんなさい!途中で設定変えたんです!直しときます!! (2020年5月23日 16時) (レス) id: 49831120ad (このIDを非表示/違反報告)
dinner born - 父親は他界済みとあるのに、ページ12には父親が1番に目を覚ましていました。 これは、作者のミスでしょうか.........? (2020年5月23日 15時) (レス) id: 1da8ba8178 (このIDを非表示/違反報告)
佳恋(プロフ) - 光華さん» ですよね!煉獄さんは神ですから死んで欲しくないですよね、、(切実)柱続行は無理でも、必ず死なせません!!笑コメントありがとうございます!励みになります!! (2020年5月13日 9時) (レス) id: 49831120ad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:佳恋 | 作成日時:2020年4月25日 13時

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