眠姫 ページ32
Aが長い眠りについてから半年ほど。
義勇、錆兎、真菰は鍛錬にあけくれる日々を送っていた。
Aが目覚めなくなってから、直ぐに鱗滝が町から医者を呼んだ。しかし、Aの体は健康体そのもので異常はなかった。ただ眠り続けるだけなのだ。
義勇はAへ日記を書き始めた。毎晩その日にあったことを記録し、最後にAへのメッセージを綴ったものだ。
そして、義勇と錆兎の最終選別のときが来た。鱗滝は無事帰ってくるよう願いを込め厄除の面を渡した。それを身につけ、二人は藤襲山向かっていく。
真菰は一足先に鬼殺隊へ進む彼らは羨ましく思った。
絶対に帰ってきてね、約束だよ。と言うと、もちろんと笑う。
次は隊服に身を包んだ姿を見せて欲しい。真菰は口元を緩ませた。
七日経ち、真菰はソワソワしていた。本来なら、もう帰ってくるはずなのだ。
日が沈み初め、不安を憶える。嘆く真菰に鱗滝は何も言わない。
そのとき、Aの指先がピクリと動いた。
______
長い長い夢を、見ていた気がする。
Aの意識はゆっくりと現実世界に浮上する。微睡みながら横へ顔を向けると、鱗滝の姿が薄紅色の瞳に映る。
「お、おはよう」
声を上げる鱗滝に笑いかける。鱗滝は面の上から目元を抑えたあとおはようと嗄れた声で返した。
扉の奥に辛い気配を感じる。暗く沈んだ深海のような冷たさ。
考える暇はなく布団から飛び出した。
木でできた扉を体当たりでこじ開ける。出た先には驚愕で顔を染める少年の姿。
走るAに呆然とする義勇。
いつかのようにAは義勇に抱きついた。苦しみも悲しみも全てを包むように優しく。何も発さずただ抱きしめる。
義勇も何も言わない。大切な人を亡くし、光が失われた双眸から涙が流れた。
義勇と錆兎の最終選別は幕を閉じた。
その年で死んだのは錆兎だけだった。
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佳恋(プロフ) - 氷柱 氷龍さん» ございます!救済しましょうかねwこれからもご愛読よろしくお願いします!! (2020年8月4日 11時) (レス) id: 052cbbf88a (このIDを非表示/違反報告)
氷柱 氷龍 - お願いしますカナエさんを出来れば死なせないでください!面白いです!w(゜o゜)w<WOW (2020年8月1日 17時) (レス) id: bd22a3d64d (このIDを非表示/違反報告)
佳恋(プロフ) - dinner bornさん» あ!そうですごめんなさい!途中で設定変えたんです!直しときます!! (2020年5月23日 16時) (レス) id: 49831120ad (このIDを非表示/違反報告)
dinner born - 父親は他界済みとあるのに、ページ12には父親が1番に目を覚ましていました。 これは、作者のミスでしょうか.........? (2020年5月23日 15時) (レス) id: 1da8ba8178 (このIDを非表示/違反報告)
佳恋(プロフ) - 光華さん» ですよね!煉獄さんは神ですから死んで欲しくないですよね、、(切実)柱続行は無理でも、必ず死なせません!!笑コメントありがとうございます!励みになります!! (2020年5月13日 9時) (レス) id: 49831120ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佳恋 | 作成日時:2020年4月25日 13時