水柱と鬼の奮闘記【冨岡義勇】

覚悟 ページ22

鱗滝は厳しく言い放つ。



｢この鬼を連れてきたのはお前だ。無害だと踏んでだ。しかし鬼の少女が罪なき人を襲ったとする。この時点でお前の判断は間違ったことになる｣




そこで区切り義勇に試すような視線を送る。





｢お前を信じた儂の判断もだ。そのときお前のやるべきことはただ一つ｣



鱗滝は顔の前に人差し指を立て、その指を義勇の腹に向ける。まるで、刀のように。








｢鬼の少女の頸を斬りお前は腹を切る。儂も一緒だ｣








鱗滝の言葉を聞き涙が零れそうになった。

切腹に怖気付いたのではない。感動したのだ。




師である鱗滝が己の世迷言を信じ命まで賭けてくれている。


切腹の覚悟があったとはいえない。だが、今この瞬間義勇の覚悟は決まった。





自分の生殺与奪権は少女に握られている。

心配することなどない。必ずさせない、理不尽に命を奪うことなど許さない。




義勇は木床に額を擦り付けた。



義勇、錆兎が驚いたような声を出す。




｢なか、ないで｣




目前に広がる少女の着物。背中に回される温もりの温度。




いつの間にか布団から飛び出したAが義勇に腕を伸ばし優しく包む。
回した手で義勇の頭を撫で、泣かないで大丈夫、大丈夫だよ。と繰り返している。



背中を優しく撫でられる。錆兎だ。


｢義勇、俺もお前と少女を信じる。親友を信用出来ぬとはそんなものは男ではない｣


真っ先に信じられず悪かった。




義勇と少女を力強く抱きしめた。





安心した義勇は疲労も祟り眠ってしまう。


途切れる意識の寸前、少女の笑顔を見た気がした。

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