水柱と鬼の奮闘記【冨岡義勇】

異変 ページ11

しかし、無惨の期待とは裏腹にAが一瞬の間に外へと飛び出した。

閉まっていた扉を音を立てこじ開け一目散へ駆けていくA。




無惨は逃げ出すとは思いもよらず一瞬唖然としてしまう。
何故、と疑問に思うも急いでAの後を追いかける。


Aは家から少し離れた用具小屋に入っていった。

そこには組紐を作る角台や重り玉、色彩豊かな正絹の糸などが一寸の乱れもなく仕舞われている。




ガタッと物音を立てて戸を締め切る。追い付いた無惨が閉められた戸を叩くが返事はない。





Aは自分の体の異変に気づいた。

思考と体が分離してしまいそうなことや内側から作り替えられてしまいそうなことに恐怖を感じ小屋に引きこもったのだ。無惨が何をしようとしたのかは理解できない。
しかし自分が家で眠る大切な家族に何かしてしまう前に隠れなくては、を守らなくてはと思った。


｢........お、おえっ........｣



唇を強く噛み締め恐怖に耐える。喉を通った血液が体中を廻っているの感じる。吐き気がし、耐えきれず口から多量の血を吐いた。頭の中がぐらぐらとする。

そんな状態でも無惨が小屋の外から声をかけていることには気づいていた。しかし、何をするのか分からない人物を相手にすることは難しい。


｢A！！どうしたんだ！｣


幸いにも戸の向こうに無惨の声が聞こえることで家族に被害が及んでいないと安心する。



｢かぞ、く、に、ぁて、だ、ぅ、さない、で........！！｣


汗を垂れ流しながら懇願の意を込めて言葉を伝える。



家族にだけは手を出さないでくれ。



そのためなら自分の命だってくれてやる。

この身体を投げ出しても構わない。





無惨が何言か発したことは気がついたが、それを理解し返答することは既に出来なくなっていた。



理由は分からないが彼は自分に執着している。





私がここにいる間は家族は大丈夫。









そう考え、深い闇のなかに思考を落としていった。

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