ー花火ー 今市隆二 × 登坂広臣 ３

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レコーディングスタジオ。



ここに向かう車中。
信号を行き交う人々の顔に
ちらほら疲労の二文字が浮かんだ。


射し込む光の色に腕時計へ一度視線を移し
また窓の外を眺める。




もう開店してるのかな…
大丈夫かな…

俺も頑張ってくるね…
そういえば臣も行くのかな…






「「今日さ……」」



何故か声が重なる。




いや、人の事を気にするより、
まずは自分が行けるかどうかだ。

正直言うと今日はかなり厳しい。

でも一目でも良いから会いたい。
数分でも数十分でも。




昨日はそんな気持ちを押し殺して
一日を過ごした。
今日の歌入れを決める為に。

あの帰り際のあの反応も気になって
連絡が遠のいたのも事実で。



臣の言う通り、デートって言葉を出した俺がいけなかったのかもって。


隆二くんって呼ばれて
舞い上がっていつもの如くついポロリと。


でも頷いてくれたから…

俺を避けたりしないよね…？

頷いてくれたから大丈夫だよね…？






集中しろ。
俺。






テーブルにいつもの物を並べて発声した。

昨日は夜遅くまでボイトレ。
喉を駆使したせいで本調子じゃない。


そういった調整、自身を把握できなかった事に
朝から少し気が立っていた。


そんな様子を汲み取られてたのか
プロデューサーさんが俺に声を掛ける。




「今市くん今日は調子どう？」



隆「実はちょっと調子悪くて…でも死ぬ気でやります！頑張ります！」



「いや、いつもデモ聴き込んで来てくれるじゃん。真摯に準備してくれるからさ、三代目の時って実は結構安心してここ来てるんだよ？」



隆「まじっすか！いやめっちゃ嬉しいっす！」



「今日も二人を聴かせてね！」



隆「あ…今回の曲って花火の時と同じ小竹さんと佐川さんで。なんでデモと花火の両方聴きこんできたんすよ！」



「夏と冬だけど、じゃあ世界観ばっちりだ？」



隆「はい、情景は一瞬で浮かびます！俺めっちゃ主人公っす！」





隣で寄り添い合って
二人で花火を見て今度は冬景色を一緒に見たいな…





「どちらから入られますか？」




エンジニアさんの声に
臣が颯爽と名乗りを上げブースの中へ。



　



冬物語。


「どんな痛みも溶かしてみせるよ」

「哀しみや涙も全部受け止めたい」





あの時も今もこの言葉が…心に刺さって。

まだ深愛には行きつけないけど…






「二人で帰ろう 二人で歩こう」





そんな関係に…なれたら良いなって。



いや、絶対なる。

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