ー花火ー 今市隆二 × 登坂広臣 ３

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「……隆二さん…」




今までと違う感じがした。
何かが違う。



それは正面からだからか
立ったままだからか




初めて…''抱きしめていい？''
…真っ向から聞かれたからか…







答えの見つからない疑問を
そのまま腕の中で考えていたら









隆「……………A…？」






胸がトクン、と甘くうずく。


　
初めての…
隆二くん…からの呼び捨て…


嬉しいけど…
恥ずかしい……






隆「…………A…」






背中に回った手の平が
髪をすーっと撫でる。





また囁くように私の名前を呼んで
深い呼吸音が一度だけ聞こえて…









隆「……デートしよ…」









もうどう表現したらいいか
　
分かんない






真っ白な世界







綿菓子みたいなふわふわの雲の上









パタンとドアを閉めて

履いてた何かを脱ぎ捨てた






駆け足で走って

ベッドに飛び込んだ









もう何かがおかしくて

頭のネジは









走ってきた廊下にぼろぼろ落としてきた









掛け布団をかき集めて抱き込んだ

それを手放して









枕に顔を埋めた









きゃーとかじゃなくて

ぎゃぁって









あの瞬間

頭が真っ白で力が入らなくって

膝がカクってなって








気付いたら座り込んでて

何か話しかけられて

カクカク頷いて









思い出すだけで顔が一瞬で熱くなる





今度デート…？デ、デート？


…し、静まりたい！


…し、沈まりたい！






　
枕よりもマットレスよりも奥深く！



やっぱり床に穴を掘って隠れたい！









.






翌日。ふらふらしながら出勤した。





血走る目で姉御に泣きつき
火照り顔で昨日の事を一部始終話す。




大人の情事がなかったことに

残念そうな顔を一瞬見せたけど

姉御は満足そうに微笑んでた。









でも朝、昼、夜。

隆二さんからの連絡は一切なくて。




いつも着ていた

おはよう、
おやすみの挨拶の言葉でさえも。






今日一日。

携帯をしきりに気にしてしまう。





あれは聞き間違だったんじゃないか…と

自分を疑い始めて。






明日はいよいよプレオープンの日なのに。

来てくれないんじゃないかと

思い始めて。






だけど何も行動に移せない自分。

指一本で簡単に済む事すら

出来ずにいた。

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