傘 ページ12
土砂降りの雨の中、
傘も差さず、
びしょ濡れで、
信号が、青に変わるのを
待っていたら、
突然、
降りかかっていた雨が、
私に当たらなくなった。
雨音は、まだ激しく鳴っていた。
私は、少し上を見上げると、
黒い傘が見えた。
...ん？
誰かが、私に、
雨が当たらないように、
傘を差してくれていた。
...誰だろう...。
私は、パッと後ろを振り返った。
...えっ？...
｢風邪、ひきますよ？｣
振り返り、
目が合った。
...と、ととと、トミーさん！？...
二ヒッと笑って、
こちらを見ている。
...な、なんで、トミーさんが...
｢大丈夫...？｣
私が、テンパっていると、
トミーさんが、再度
声を掛けてくれた。
『...あ、えっと、は、はい。』
それに、慌てて返事をした。
...え、待って、
なんで、トミーさんが、
目の前にいるの...！？
｢傘、持ってないなら、送りますよ？｣
...えっ...
｢...あ、別にナンパとかそういうんじゃなくて、びしょ濡れだから...あ、もし嫌だったら、傘貸します...なんなら、あげますんで...。｣
戸惑っている私を見て、
頭を掻きながら、
慌てて言うトミーさん。
『あ、いえ、ナンパだなんて思ってないです。だって、カフェの常連さん...ですし。』
私も慌てて否定した。
...そう、常連さん、
常連のお客様なんだ。
｢あ、覚えてくれてたんですね。｣
少し嬉しそうに、
そう言われた。
...気がした。
『はい。勿論です。』
...水溜りボンドのトミーさんですよね？
なんて、言っちゃうと、
困らせちゃう気がする...。
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作者名：渚 | 作成日時：2018年12月18日 0時
