魚に謝って ページ24
水族館を訪れたのはいつぶりだろうか。
静かでひんやりとした空間と各コーナーごとに違える幻想的な生物たちの展示は見ているだけでも楽しい。
大型水槽にはイワシの群れやエイ、そのほか様々な生物が悠々と泳いでいる。
「いいなー……魚とか悩みなさそう。私も水槽の中で自由に泳ぎ回りたいよ」
「貴様は魚になりたいのか?自ら自然界の捕食対象になりたいと?」
「魚たち目の前にしてなんてこと言うのさ」
「貴様が魚になるのならば、他の奴らに食われる前に私が食らってやる。安心しろ」
「ならないし安心出来ない。あと食べないで」
大型水槽を見ていたAの前にエイがお腹を向けて空を飛ぶように泳ぐ。
「……そういえば貴様は以前、エイの裏側を顔だと勘違いして泣いていたな」
「小学生の時ね」
Aは苦笑いをしながら高く舞ったエイを見上げた。
あれは小学校の修学旅行で別の水族館を訪れた時。
アーチ状の水槽の中で「魔法のじゅうたんだ!」と言っていた同級生が指差す方を見上げた瞬間、エイリアンのような顔をしたエイの裏側に恐怖を抱き、思わず泣き出してしまったのだ。
「思い出しただけでも恥ずかしい」
「先に進むぞ」
背を向けて歩いて行く三成の後に続く。
……確か、あの時もこうして彼の後をついて行った。
泣き出したAの腕を引いて、『奴が来ないところまで逃げるぞ!』と担任の先生に止められながらもエイが見えなくなるまで一緒に逃げてくれた。
今思えば、微笑ましいプチ事件である。
「(三成も流石にそこまでは覚えていないだろうけど)」
当時の自分が今その彼と恋人になっていると知ればどんな反応をするだろう。
Aは懐かしさと照れくささを感じながら、次のフロアへ向かった。
*******
一方その頃。
三成たちを追って水族館まで来た左近と吉継は何とも気まずい空気になっていた。
「……俺ら、ほんとなにしてんっスかね」
「あやつらの動向が気になると言ったのはヌシであろう?」
「確かにいざとなればハプニングの一つでも起こして進展させようと思ったけど!なんか!普通に!リア充してて!逆に俺ら邪魔じゃないっスか!?」
「何事も無く終わればそれでよし。その時は祝いの宴でも催すとしよう」
「あ、俺寿司食いたいっス。魚見てたら腹減ってきちゃって」
「ヌシも大概よなァ」
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三楓(プロフ) - 紫月姫さん» コメントありがとうございます!色々重なってバタバタしていましたが最近はだいぶ落ち着いてきました。以前の更新形態に戻れるよう少しづつではありますが精進します(*´∀`*) (2020年7月6日 14時) (レス) id: fa2fc96bb4 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - シナシグさん» ありがとうございますm(__)m無理しない程度に頑張ります! (2020年7月6日 14時) (レス) id: fa2fc96bb4 (このIDを非表示/違反報告)
紫月姫(プロフ) - お知らせ&このコメ見ました。お悔やみ申し上げます。無理せず落ち着いてからで構いませんよ?(*^^*)その間に色んな三成さまを拝みに行ってきます!変なコメントで失礼致しました! (2020年7月3日 21時) (レス) id: 9da1b7754e (このIDを非表示/違反報告)
シナシグ(プロフ) - 三楓さん» そうだったのですね...お悔やみ申し上げます。気落ちすると色々マイナスに考えがちになってしまうので無理せず自分の好きな事をしたりしてリフレッシュしながら頑張って下さい!一読者ですが応援してます!(っ`・ω・´)っフレーフレー!!! (2020年7月1日 22時) (レス) id: 63a06f166a (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - シナシグさん» コメントありがとうございます!実は最近身内の不幸がありまして慌ただしくしておりました。ようやく少し落ち着き、これから心の整理のためにも物語を書きたいと思います(*´∀`*) (2020年7月1日 3時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2020年5月21日 0時