無自覚 ページ21
「我はいつも通りよ。己の嫉妬を我のせいにするでないわ」
「私がいつ貴様に嫉妬した?」
「……自覚が無いとはなんとたちが悪い。案ずるな。我は女に溺れるほど落ちぶれておらぬ」
どこか棘がある言い方をして、元就は三成の背に隠れたAを無感情で見ていた。
「絆を忌む貴様が、この女との絆を守ろうとするとはな。ふん、何とも滑稽なことよ」
「家康が語る絆と同等に扱うなッ!」
「ならば違いを申してみよ。所詮どちらも見えぬ糸ではないか。いつ綻びが生じようと、いつ途切れようとその瞬間は分からぬ。……いや、それ以前に最初からそんなもの存在していなかったとしたら……石田、貴様はどうする?」
「……何が言いたい」
元就の遠回しな言動に苛立つ三成。
一方問いを投げた元就は、やがてまともに相手をするのが馬鹿馬鹿しくなったのか、大袈裟に溜息を吐いて冷ややかな視線を投げた。
「……大谷が苦労するわけだ」
毒づいた言葉を残して、彼らの横を通り過ぎる。
元就の姿が見えなくなると、三成は分かりやすく嫌悪感を露わにした。
「やはりあの男はどうも気に食わない」
一生分かり合えることは無いだろうと結論づけて、背中に隠れていたAの様子を伺う。
どうやら今回は逃げたりしないようだ。
「あのような男は苦手か?」
「……はい。何を考えているのか分からない人は、ちょっと苦手です」
その言動にほっとしている自分がいた。
同時に、元就から言われた言葉を思い出す。
『己の嫉妬を我のせいにするでないわ』
“嫉妬”。
三成はその感情をよく知っている。
豊臣時代、手柄を取る度に周囲から散々向けられてきたものだ。
けれど、それとはまた違うものなのだろう。
Aを良からぬ眼で見ていた男に向けた殺気と、元就とAが話しているのを見た時の苛立ち。それらはとてもよく似ていた。
Aに触れないでほしかった。
Aと話さないでほしかった。
Aを奪わないでほしかった。
「……そうか。私はずっと、嫉妬していたのか」
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三楓(プロフ) - 天智就佐さん» コメントありがとうございます!病んでる三成様を書いているといつも以上にキーボードが捗るので(笑)まだまだ頑張ります(*´∀`*) (2020年4月4日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
天智就佐(プロフ) - 更新頻度が早くて内容が神なんて尊敬します!これからも頑張ってください! (2020年4月4日 17時) (レス) id: b2ae4e5a5c (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 霧雨ルカさん» コメントありがとうございます(*´∀`*)更新頑張ります! (2020年3月30日 19時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
霧雨ルカ(プロフ) - 三楓さんの小説好きです!これからも頑張ってください!!応援してます! (2020年3月30日 13時) (レス) id: 58200a85c8 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 紫月姫さん» コメントありがとうございます!たまには病みかけているところから書きたいなと思いまして...(笑)自分のペースで更新頑張ります!(*´∀`*) (2020年3月28日 21時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2020年3月23日 22時