毒 ページ7
突然の事で自失した三成が状況を理解するまでほんの少し時間がかかった。
驚いたゆえに思考が停止した、という訳では無い。一瞬にして陶酔したかのように頭が回らなくなったのだ。
このまま眠りに落ちかけたところをなんとか踏ん張り、女を突き放してよろける身体を城の柱に預ける。
「……貴様ッ、まさか毒を仕込んで」
眠いと叫ぶ身体が柱から滑り落ちた。
それを無理矢理起こすように柱の角に後頭部をぶつけ、痛みで睡魔に耐える。
くノ一が情報収集のために男を誑かすというのはよくある話だ。
女に騙されるのは馬鹿な男だけだと高を括っていた自分が憎いほど愚かしい。
あれだけ警戒していたというのにこのような事態、一体誰が予測できただろう。
「毒だなんて、そんな物騒なことしませんよ」
女が妖しく笑んだような気がした。
次第に身体が重くなる。
家康の間者ならばこの場で斬滅してやると虚勢を張るが、刀の柄を掴んでも力が入らず、そのまま三成は眠りに落ちてしまった。
*******
決して目を瞑ってはならない。
眠る度、あの光景を追憶してしまう。
灯火が消えたあの日を何度も体験して、何度も嘆いてしまう。
雨の感触さえ生々しく思えてならないその夢を見たくないがため、眠ることを止めた。
休息を取ることも止めた。
この因果をいつでも断ち切れるように、ひたすら夜と向き合ってきた。しかし今宵はあの女のせいでそれが叶わず。
あとどれだけこの苦しみを味わえばいいのだろうか。
いつになれば私は秀吉様に許しを乞うことができるのだろうか。
今宵もまた、身が引き裂かれるような思いを味わうものだと思っていた。
もしくは何の悲願も達成出来ずに毒に侵されて死んでいくのかと思っていた。
部屋に差し込んだ朝日を見るまでは。
「……」
視界に映るのは己の手。
まだ覚醒しきっていない頭で何の意味もなく指先を折り曲げたりしてみる。
あぁ、死んではいないようだ。
僅かに開いた障子の隙間から、縁側に飛んできた小鳥が朝の挨拶をするように小首を傾げる。
その鳥が飛び立つと同時に、今度は足音と障子が擦れる音が鳴った。
「おはようございます。本日もいい天気ですね」
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三楓(プロフ) - こゆきさん» コメありがとうございます！三成様は主人公が悲しいから泣いていると思って、それを取り除いてあげようとしたようですね...（笑）楽しんで頂けて嬉しいです！これからの展開も楽しんでもらえるよう更新頑張ります(*´∀｀*) (2018年10月18日 1時) (
レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
こゆき - 三成から口付けをしたんですか！？意外と三成って積極的ですよね笑 でもなんだか病みそうな気配が……。ものすごく楽しいです！！(>ω<*) (2018年10月17日 23時) (レス) id: f544f7d6d0 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - こゆきさん» いえいえ、こちらこそ貴重なご意見ありがとうございました！アニキのシーンは一旦終わってしまいますが、再び登場しますので気長に待って頂けると嬉しいです(*´∀｀*) (2018年10月8日 19時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
こゆき - いつも更新お疲れ様です！きゃあきゃあしながらいつも見てます笑笑 アニキ登場！！！！！私の希望に答えていただき、本当にありがとうございます(´ω`*)とても嬉しいです！ (2018年10月7日 21時) (レス) id: f544f7d6d0 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - こゆきさん» コメありがとうございます！さぁ...いつ病むのでしょうかね...？（笑）アニキも登場しますので今後の展開をどうぞお楽しみください(*´∀｀*)更新の方も頑張ります！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三楓 | 作成日時：2018年10月5日 23時
