天賜 ページ35
Aは徳川方の兵士に家康を託し、兵が退いて行く様子を城の格子から見つめていた。
静寂が訪れた城内には逃げ延びた人々が引き返し、広い一室では傷を負った兵士たちの手当てが行われている。
「A！」
名を呼ばれたAは、視線を格子の外から室内へ向けた。
そこに立っていたのは息を切らした三成。
ずかずかとAの元へ歩み寄り、強引に彼女の両肩を掴んだ。
「無事か！怪我は！？」
「大丈夫ですよ。何ともありません」
「だったらその血はなんだ！」
Aの衣服にはべっとりと血痕が付着している。
「あぁ、これは元康様の」
「……やはり奴は貴様と接触していたのか」
徳川軍の撤退直前まで本多忠勝に苦戦を強いられていた三成は、悔しさのあまり奥歯を噛み締めた。
元々家康も秀吉の配下。
城の構造は大体把握していたはずだ。
大凡の場所を絞り込み、Aがいる場所を特定することも容易い。
それだけではない。
今回、敵は傷を負っているからと完全に油断しきっていた。
お陰で敵を城内にまで入れてしまう始末。
いつもこうだ。
豊臣時代も、戦略で家康に勝ったことはない。
一体何が違う。
修羅場を潜ってきた数か。
心構えか。それとも、天性の才能か。
ライバル心を燃やせば燃やすほど、三成は無意識に自分を追い込んでいった。
「A、こんな状況で悪いがどうにも苛立ちが抑えられなくてな」
柔らかなAの頬に手を添える。
心を荒れ狂う感情に飲まれてしまう前に
怒りで我を忘れてしまう前に
「いいか？」
三成は、建前だけの許可を取った。
「私は構いませんが、今は奇襲で傷ついた人たちを優先した方が」
「駄目だ。今すぐ私をこの劣等感から解放しろ」
待てない。
そう心が叫んだ時には既に手遅れだった。
唇が触れる度、抱いていた劣等感がすうっと消えていく。
『特定の相手に恋心を抱くことは無い。それが薬餌人に課せられた呪いだと文献に書かれていました』
目を細めAが言っていたことをふと思い出す。
本当に、いなかったのだろうか。
心から慕った相手は本当に今までいなかったのだろうか。
歯止めをかけようとしたAを壁へ追い込み、胸を締め付ける感覚がなくなるまで何度も口付けを交わした。
しかしその感覚は拭えず、それどころか別の何かに変わりつつあった。
気が狂いそうだった。
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三楓(プロフ) - こゆきさん» コメありがとうございます！三成様は主人公が悲しいから泣いていると思って、それを取り除いてあげようとしたようですね...（笑）楽しんで頂けて嬉しいです！これからの展開も楽しんでもらえるよう更新頑張ります(*´∀｀*) (2018年10月18日 1時) (
レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
こゆき - 三成から口付けをしたんですか！？意外と三成って積極的ですよね笑 でもなんだか病みそうな気配が……。ものすごく楽しいです！！(>ω<*) (2018年10月17日 23時) (レス) id: f544f7d6d0 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - こゆきさん» いえいえ、こちらこそ貴重なご意見ありがとうございました！アニキのシーンは一旦終わってしまいますが、再び登場しますので気長に待って頂けると嬉しいです(*´∀｀*) (2018年10月8日 19時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
こゆき - いつも更新お疲れ様です！きゃあきゃあしながらいつも見てます笑笑 アニキ登場！！！！！私の希望に答えていただき、本当にありがとうございます(´ω`*)とても嬉しいです！ (2018年10月7日 21時) (レス) id: f544f7d6d0 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - こゆきさん» コメありがとうございます！さぁ...いつ病むのでしょうかね...？（笑）アニキも登場しますので今後の展開をどうぞお楽しみください(*´∀｀*)更新の方も頑張ります！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三楓 | 作成日時：2018年10月5日 23時
