墓参り ページ4
肌寒い日が続き、羽織が必要な季節になった。
先日まで騒々しく鳴いていた蝉たちはある日を境にぱたりと姿を消し、木々の下には一週間という儚い天寿を全うした骸がごろごろと転がっている。
そのまま朽ち果てるものもあれば、ほとんどが他の虫や獣の血肉となり命を繋ぐ。
まさにそれが生の本分。
Aはそれを深く理解していた。
「咲くか枯れるか手向け花、われの影を踏めずとも……」
童謡のような歌声がこだまする。
口ずさむAの手には様々な種類の花が抱えられていた。
生憎彼女には花の知識などない。
故に抱えている花はどれも枯れる寸前のものばかりだがそんなこと露知らず、戦場で散ってしまった名もなき兵士たちのために建てられた石碑に花を添え、手を合わせた。
「見境が無いな」
Aの背後に立つ男。
武装したままの彼は左手に持った刀の柄をAの背に向ける。
「枯れかけの花は止めろと言っただろうが」
「そうは言っても、今咲いている花を摘むのは可哀想だから」
「花なぞに情けをかけてどうする」
「どうもしないけれど、花も一輪で死んでしまうよりは誰かと一緒の方がマシだと思うんだ。君も一人は嫌だろう？」
先日主である豊臣秀吉の墓前で出会った女の問いに、男、石田三成は苛立ちを覚えた。
「貴様、今すぐその話し方を止めろ」
「どうして？変だったかな？」
「妙に上からなのが気に触る」
「そっか、やっぱり兵隊さんだと上下関係に厳しいのか。うん、気をつけます」
ほんの少し口調を変えたせいか、小生意気という印象から淑女らしい印象にガラリと変わる。
三成もそれに納得したのかそれ以降口調に対しての口出しをすることは無くなった。
「行くぞ。余計なことをして私の手を煩わせるな」
「そうですね。仮にも私は居候の身、尚且つこの土地の主である……えっと、石田、なり……」
「石田三成」
「そうそう、石田三成様」
名前すら曖昧の相手とよく行動を共に出来るな、と三成は喉の奥で言葉がつっかえる。
気が抜けそうになる気持ちを抑えて、水鳥の親子のように後ろをついてくる女を横目に見た。
今はこうして行動を共にしているものの、この女の正体は未だはっきりと分かっていない。
彼女が抱える用事とやらを手早く済ませ、一刻も早くこの土地から追い出してしまいたかった。
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三楓(プロフ) - こゆきさん» コメありがとうございます！三成様は主人公が悲しいから泣いていると思って、それを取り除いてあげようとしたようですね...（笑）楽しんで頂けて嬉しいです！これからの展開も楽しんでもらえるよう更新頑張ります(*´∀｀*) (2018年10月18日 1時) (
レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
こゆき - 三成から口付けをしたんですか！？意外と三成って積極的ですよね笑 でもなんだか病みそうな気配が……。ものすごく楽しいです！！(>ω<*) (2018年10月17日 23時) (レス) id: f544f7d6d0 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - こゆきさん» いえいえ、こちらこそ貴重なご意見ありがとうございました！アニキのシーンは一旦終わってしまいますが、再び登場しますので気長に待って頂けると嬉しいです(*´∀｀*) (2018年10月8日 19時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
こゆき - いつも更新お疲れ様です！きゃあきゃあしながらいつも見てます笑笑 アニキ登場！！！！！私の希望に答えていただき、本当にありがとうございます(´ω`*)とても嬉しいです！ (2018年10月7日 21時) (レス) id: f544f7d6d0 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - こゆきさん» コメありがとうございます！さぁ...いつ病むのでしょうかね...？（笑）アニキも登場しますので今後の展開をどうぞお楽しみください(*´∀｀*)更新の方も頑張ります！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三楓 | 作成日時：2018年10月5日 23時
