焦眉 ページ23
それは、日の光が微かに射し込む程度の曇り空だった日のこと。
いつもの様に稽古をしていた三成は、参謀の大谷吉継から妙な話を聞いた。
「主は
「……なんだそれは」
「まあ簡単に申せば、その人間自体が治療薬のようなものなのだが」
その人間自体が治療薬。
それを聞いて真っ先に思い浮かんだのはAだった。
「これから領土拡大のため、戦をすることが多くなるであろう？それを知った豪商が、買わぬかと売りつけてきてなァ」
「なに？」
「勿論、不要だと追い返した。そこで我は主に今後このような商売を禁じるよう触れを」
「待て刑部。まさかそれはAではなかっただろうな？」
稽古をそっち退けて三成は刑部につっかかる。
Aと名指しで言われてもピンと来ていない刑部は、「品は女童だった」とだけ伝えると何故かホッとしたような顔をされた。
「童、なら違うか……」
「主が以前まで連れていた女子も
刑部がそういうのも、薬餌人は希少価値のある人材で売る側としては高額で売れるのだ。
薬餌人という人種は昔から存在しており、遺伝からなるものではなく、何らかの経緯で突然力を得ることが特徴だった。
かつてはそんな彼らを『天からの賜物』として人々は崇め奉っていたが、時代が変われば信仰も薄れ、次第にその力を金に換えようと権力のある者たちによって商品として扱われるようになる。それにより権力者同士で売買されることも多々あった。
やがて薬餌人は自分たちを守るため、正体を隠すようになり、それが功を成したのか商品としての数が減った。
しかしここで三成の脳裏に嫌な予感が過ぎる。
墓石を巡拝しながら旅をしているAがやっていることは、薬餌人の観点から見て非常に危険なことなのではないか？
背筋がすっと凍る。
呑気に旅をしている場合かとこの場にいないAへ向かって言いたくなった。
あのお人好しなら知らぬ輩にほいほいとついて行きそうだ。いや、絶対について行くだろう。
「刑部、今すぐに触れを出せ。薬餌人の売買禁止と、解放。逆らう奴には重罪をかけると」
「相分かった。手配しよう」
「私は奴を探す」
「一人でか？」
「手伝いなど要らん」
三成は馬小屋へ走りながら心の臓が軋む音を聞いた。手綱を引く手に過剰なほど力がこもる。
何故私は、あの女のためにこんなにも必死になっているのだろう？
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三楓(プロフ) - こゆきさん» コメありがとうございます！三成様は主人公が悲しいから泣いていると思って、それを取り除いてあげようとしたようですね...（笑）楽しんで頂けて嬉しいです！これからの展開も楽しんでもらえるよう更新頑張ります(*´∀｀*) (2018年10月18日 1時) (
レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
こゆき - 三成から口付けをしたんですか！？意外と三成って積極的ですよね笑 でもなんだか病みそうな気配が……。ものすごく楽しいです！！(>ω<*) (2018年10月17日 23時) (レス) id: f544f7d6d0 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - こゆきさん» いえいえ、こちらこそ貴重なご意見ありがとうございました！アニキのシーンは一旦終わってしまいますが、再び登場しますので気長に待って頂けると嬉しいです(*´∀｀*) (2018年10月8日 19時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
こゆき - いつも更新お疲れ様です！きゃあきゃあしながらいつも見てます笑笑 アニキ登場！！！！！私の希望に答えていただき、本当にありがとうございます(´ω`*)とても嬉しいです！ (2018年10月7日 21時) (レス) id: f544f7d6d0 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - こゆきさん» コメありがとうございます！さぁ...いつ病むのでしょうかね...？（笑）アニキも登場しますので今後の展開をどうぞお楽しみください(*´∀｀*)更新の方も頑張ります！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三楓 | 作成日時：2018年10月5日 23時
