見回り ページ15
夜も更け、今夜は寝る間も惜しんで城内を巡回していた三成はまだ明かりが灯る部屋の障子に手をかけた。
「貴様、まだ起きていたのか」
部屋を借りているAは特に何かをしていたわけではなく、ただ揺れる灯火を眺めていた。三成が障子を引いたことで風圧が生じ、灯火が大きく揺れる。
「明日も例の恩人を探すのだろう？早く寝ろ」
「そのことなんですが……私、明日大阪を去ろうと思います」
「何？恩人はもういいのか」
Aは言葉を濁し、視線を下げた。
「一喜一憂するくらいならば恩人探しなど止めてしまえと」
「まさか真に受けたのか？」
「……それだけではなく、これだけ手伝ってもらっても見つからないのならそろそろ止め時なのかなとも思って」
時には諦めも肝心。
今がその時だと主張するAに対して、三成はそれを鼻で笑う。
「ふん、所詮その程度の恩だったのだな」
「それは違います」
諦めが恩の重さと比例している訳では無い。
そう訂正した上で、Aは初めて反論の意を示した。
「あの人がいなかったら私はきっと死んでいた。あの人が私に考える力と言語を教えてくれた。例えほんの一時だったとしても、私にとっては奇跡のような時間だったんです」
「ならば尚更、そう簡単に諦めていいのか」
正論に言葉を詰まらせる。
だが恩人探しを諦めない、それはすなわちこの大阪に残りもうしばらく三成の世話になるということを意味していた。
「それに今ここを去るというのなら、貴様もあらぬ疑いをかけられるぞ。濡れ衣を着せられたくなければ今去るのは止めておけ」
「……やはりあの兵隊さんの傷は」
三成は瞼を閉じて静かに「あぁ」と答えた。
「だから余計なことを考えるくらいなら早く寝ろ。盟約した通り、恩人を見つければここを出ていけばいい」
「……分かりました。本当に、なんとお礼を言ったらいいのやら」
「礼はいい。私はもう行くぞ」
「はい。三成様も早めに休んでくださいね」
三成が静かに障子を閉めると、直ぐに部屋の灯火が消える。明かりがなくなった今、視界に広がるのは暗がりだけとなった。
「……私の心配をするなど、変な奴だな」
Aの部屋の前で思わずぽつりと本音が漏れる。
静寂が訪れた城の格子から、冷えた夜風が彼の耳元で囁くようにひょうと鳴いた。
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三楓(プロフ) - こゆきさん» コメありがとうございます！三成様は主人公が悲しいから泣いていると思って、それを取り除いてあげようとしたようですね...（笑）楽しんで頂けて嬉しいです！これからの展開も楽しんでもらえるよう更新頑張ります(*´∀｀*) (2018年10月18日 1時) (
レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
こゆき - 三成から口付けをしたんですか！？意外と三成って積極的ですよね笑 でもなんだか病みそうな気配が……。ものすごく楽しいです！！(>ω<*) (2018年10月17日 23時) (レス) id: f544f7d6d0 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - こゆきさん» いえいえ、こちらこそ貴重なご意見ありがとうございました！アニキのシーンは一旦終わってしまいますが、再び登場しますので気長に待って頂けると嬉しいです(*´∀｀*) (2018年10月8日 19時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
こゆき - いつも更新お疲れ様です！きゃあきゃあしながらいつも見てます笑笑 アニキ登場！！！！！私の希望に答えていただき、本当にありがとうございます(´ω`*)とても嬉しいです！ (2018年10月7日 21時) (レス) id: f544f7d6d0 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - こゆきさん» コメありがとうございます！さぁ...いつ病むのでしょうかね...？（笑）アニキも登場しますので今後の展開をどうぞお楽しみください(*´∀｀*)更新の方も頑張ります！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三楓 | 作成日時：2018年10月5日 23時
